奈良大会で春夏連続甲子園を目指す天理が猛打爆発でベスト8に進出した。1回裏に冨木崚雅(3年)の左翼への満塁本塁打などで一挙8点。4回裏にも3点を追加し、五條に5回コールド勝ちした。冨木は初戦の智弁学園では先発して1失点完投、打者専念のこの日はド派手な満弾。自称“目立ちたがり”の本領を発揮した。

 公式戦初となる満塁本塁打を放ち、どや顔で一塁側ベンチに戻ってきた冨木を待っていたのは、まさかのナインからの野次だった。

 「まだ、打たなくてもよかったやろ!」

 1回裏、五條の先発投手が制球を乱して3四死球など1死満塁で回ってきた打席。試合前のミーティングで「相手投手は初球、変化球で入ってくる」というデータ分析が伝えられていた。ところが初球はストレート。「あれ? データと違う」と思いながら、2球目の高めのストレートに思わず手を出してしまった。狙い通りの打撃とは違ったものの、鋭い打球は小雨の中を切り裂いて左翼席へ。「上から思い切りひっぱたいたら、入ってしまいました」。思わず手が出たストレートがまさかの満塁弾。本人もナインもビックリの1発で、ベンチのムードは一気に盛り上がった。

 初戦の智弁学園戦では背番号7ながら先発し7安打完投勝利。しかし打席は2三振1四球と振るわなかった。「きょうは打撃に専念できたので、気楽にいけました」。4回裏にも二塁打を放ってこの日は3打数2安打。5番打者としての責任を果たしてにんまりだ。

 自称「お調子もの」。目立つことが大好きで、橋本武徳監督(70)も「冨木は乗っている」と、そのムードメーカーぶりを評価する。好きなプロ野球選手は日本ハムの中田翔。「あの雰囲気、威圧感たっぷりで野球をしているっていう感じがいいんです」。他にアピールポイントは? と聞かれると「足がでかくて30センチあるんです。スパイクは特注です」とカメラマンに掲げてみせた。エンターテイナーの素質も十分。冨木が目立ち続ければ、目標の春夏連続の甲子園も現実のものとなる。【坂祐三】

 ◆冨木崚雅(とみき・りょうが)1997年(平9)10月4日、兵庫県姫路市生まれ。的形小2年から野球を始め、大的中では姫路アイアンズに所属。天理入学当初は右翼、現在は左翼、投手。183センチ、83キロ。50メートル6秒3。遠投115メートル。右投げ右打ち。血液型A。父、母、姉2人。