秋田商が秋田南を下し、2年ぶり18度目の甲子園出場を決めた。初戦から5連投のエース左腕、成田翔(かける=3年)が6回まで完全投球。3安打無四球完封勝利を挙げた。今大会39回を投げて55奪三振。身長169センチの「ドクターK」として、1年夏以来の甲子園でも注目投手の1人となりそうだ。

 圧巻の投球だった。9回裏2死一塁から相手3番を左飛に仕留めた成田翔は、工藤慶捕手(3年)と抱き合って喜びを爆発させた。現メンバーで唯一、2年前の甲子園を知るエースは「もう1度、あの舞台に立てる。頑張ってきてよかった」と緊張から解き放たれて笑顔を見せた。

 秋田南先発・中島和俊との今夏、秋田を代表する左右の3年生エース対決を制した。140キロを超える直球とキレのあるスライダーで、6回まで打者3人ずつに抑える完全ペース。7回裏1死から内野安打を許し、2死一、三塁の窮地を背負ったが、後続を今春覚えたツーシームで空振り三振に仕留めた。「(完全試合は)意識していませんでした。(初安打は)初めてセットポジションに入ったので分かった」と意に介さなかった。

 昨秋の県準決勝(大曲工戦)、同3位決定戦(西目戦)ともに中盤に先制を許し、スタミナ不足で6回途中降板する悔しさを味わった。冬場は走り込みで下半身を強化。「今年はユニホームがきつくなった。直球の伸びもキレも増したように感じる」と実感し、課題を克服した。

 全球種でストライクを取れるようになり、今大会は5試合すべてに投げ、39イニングで55奪三振。奪三振率は12・69と「ドクターK」ぶりを発揮した。一方で、球数を少なくするために打たせて取る投球術も会得。カウントを有利にするためにファーストストライクにこだわっている。

 部の大先輩で同じ左腕のヤクルト石川にあこがれ、「石川2世」の期待も背負う。97年夏、石川とバッテリーを組んで甲子園1勝の太田直監督(36)は「冷静に投げられるようになった。組み立て方はまだまだだが(当時の)石川より球速は速い」と評価している。

 チームは高校野球100年の節目に、春夏通算24度目の甲子園出場を決めた。夏の第1回全国大会準優勝の秋田(当時は秋田中)の通算24度に並んだ。2年前の10番からエース番号を背負って“聖地”に戻る成田翔は「(初戦で)石川さんは勝っているので、塗り替えて勝ち上がりたい」とまずは1勝を狙う。【佐々木雄高】

 ◆成田翔(なりた・かける)1998年(平10)2月3日、秋田市生まれ。小4から野球を始める。秋田東中では軟式野球部に所属し、投手。秋田商では1年春からベンチ入り。同夏の甲子園では2回戦の富山第一戦で8回から救援し2回無失点。家族は祖父母、両親、妹。左投げ左打ち。169センチ、70キロ。血液型B。

 ◆秋田商 1920年(大9)創部の市立校。生徒数は719人(女子396人)。野球部は22年創部で、部員72人(マネジャー1人)。運動部ではサッカー、レスリング部などが全国レベル。主なOBにヤクルト石川雅規ら。学校所在地は秋田市新屋勝平台1の1。鎌田勝校長。

◆Vへの足跡◆

2回戦10-6秋田西

3回戦18-0能代西

準々決勝3-1西目

準決勝5-1秋田工

決勝4-0秋田南