国学院栃木の渡辺峻平投手(3年)が7回4安打1失点の好投で、10年ぶり5度目の決勝に導いた。マウンドの姿が、春とは少し違った。「打たせていくよ」。アウトを取る度に声をかけた。「今まで個人個人に言葉をかけることはなかった。1人でやってしまっていた」と振り返る。

 春の関東大会8強入り後に2軍に降格した。独りよがりのプレーが柄目直人監督(32)の目についた。「心の強化です。期待の裏返しでもあるが、もう一皮むけてもらわないと」と決断。2軍では走り込み、自分に足りないものを考え抜いた。「もっと周りを見ればよかった。仲間と同じ気持ちでいないといけなかった」。

 6月中旬に監督とチームメートに反省点を伝え、1軍復帰。「笑顔で迎えてくれてありがたかった」。感謝の気持ちを最後の夏にぶつける。今大会2試合に先発し合計13回を2失点、打っては5試合で12打数4安打2打点で1本塁打も放っている。決勝の相手は、今春の県大会決勝で4-6で敗れた作新学院に決まった。「フォア・ザ・チームに徹して楽しんでできればいいな」。今の渡辺は、もう1人じゃない。【松尾幸之介】