【2015白球メモリー:羽黒・中嶌龍生投手(3年)】

 「初めてこんなに泣いた」。涙が頬を伝うと膝の力が抜けて、崩れ落ちたまま動けなかった。集合写真に無理やりな笑顔で納まる仲間の端っこで、ひとり号泣していた。「お母さんと3年生とみんなで一緒に甲子園に行こうと約束してたのに…申し訳ない」。

 新庄シニア時代の仲間が相手主軸に3人。「楽しみにしていた。倒して甲子園に行くのが目標」だった。羽黒の「1」を背負い、ここまでほとんど1人で投げ抜いてきた。だが大事な一戦を前に右手中指はマメがつぶれ、人さし指の爪は割れた。それでも小泉監督から「全部お前でいく」と背中を押された。

 気合で投げた。が、得意のスライダーは決まらず、直球も120キロ前半で「全て思うようにいかなかった」。4回途中までに8失点し降板。6回途中から再び戻り、最後の力を出し切って投げ続けた。試合後、女手ひとつで育ててくれた母美穂さん(40)から抱き締められた。小4まではボクシングで体を鍛え、羽黒で甲子園一歩手前までチームを引き上げたが、届かない夢だった。「泣かないでと言われても無理…」。ようやく訪れた晴れの決勝戦だったが、涙の雨は止まなかった。【成田光季】