天理が一気の猛攻で優勝を決めた。4回までノーヒットも、チーム初安打が集中打の口火だった。5回。先頭の川崎浩大内野手(3年)が中前打で出塁すると、送りバント、四球などを含め、単打のみの8安打を集中。打者12人を送り込んで、一挙8得点でケリをつけた。

 主将の貞光広登内野手(3年)は「この回が始まる前に、みんなで円陣を組んで、低い打球を打っていこう」とナインで確認しあった。1失点完投の先発右腕、冨木崚雅(3年)も「3者凡退に抑えれば、流れが来る」と我慢の投球を見せ8回まで0を重ねた。

 6月29日、チームに衝撃が走った。エース左腕の斎藤佑羽(3年)が、バント練習中に打球を左手中指に当てて骨折。奈良大会には投げられなくなった。しかし「斎藤を甲子園で投げさせよう」とナインの気持ちが1つになった。“代役”として初戦の智弁学園戦に先発した冨木は、7安打完投をやってのけ、この日も2安打完投。甲子園出場を呼び込んだ。

 春夏合わせて50度目の聖地。86、90年に全国制覇した橋本武徳監督(70)は「巡りあわせによっては…」と言葉を濁したが、3度目の全国制覇へ。奈良の強豪が甲子園に乗り込む。【坂祐三】

 ◆天理 1900年(明33)創立の私立校。生徒数1210人(女子553人)。野球部の創部は1901年で、部員数は43人。甲子園出場は春は23度、夏は27度目。春は97年、夏は86年、90年に全国制覇。主なOBは門田博光(元南海)、関本賢太郎(阪神)ら。所在地は、天理市杣之内町1260。飯降成彦校長。

◆Vへの足跡◆

2回戦4-1智弁学園

3回戦11-0五條

準々決勝8-1磯城野

準決勝5-0畝傍

決勝8-1大和広陵