小さな打者が大きな壁を打ち破った。明石商が延長11回、先頭打者の背番号16、大西進太郎外野手(2年)のサヨナラ本塁打で、昨夏の覇者の神戸国際大付を撃破。大西自身高校初アーチがチームに初の決勝進出をもたらした。最高のムードで悲願の夏甲子園出場へ、同じく準決勝で西脇に競り勝った滝川二と対戦する。

 すべて初めてだった。無心でバットを振った明石商・大西が、一塁ベースを回ったところで一塁側スタンドが沸いた。左翼芝生席に飛び込むサヨナラ弾。高校に入って初めて放った本塁打が、チームにどでかい勝利をもたらした。「ホームベースで待ってるみんなの笑顔がうれしかった」。ホームを踏むと、待ち受けたナインが歓喜する中で、とびきりの笑みを浮かべた。

 サヨナラ打も初めてだった。「とにかくランナーに出ようと思っていた」。延長11回、先頭打者として打席に入った大西は3球目を思い切り振り抜いた。「最後まで何が起こるか分からないから、あきらめなかった。3年生とまだ野球がしたかった」。劇的勝利のプロローグも大西から始まった。1点ビハインドで迎えた9回、先頭打者で打席に入った大西は右前打で出塁。その後、上ノ谷一樹内野手(3年)の適時打で同点ホームを踏んでいた。

 昨秋は地区大会で初戦敗退。敗者復活で県大会に進んだが初戦敗退した。今春も地区大会で2回戦敗退。狭間善徳監督(51)が「お前らは史上最弱や。これで終わるのか」とハッパをかけて迎えた今夏だった。「夏を前に1カ月、強化合宿をした。夜10時まで振り込んだ。大西のホームランはまぐれだろうが、もともとセンスはいい。決勝は思い切っていきたい」と意気込む。163センチ、60キロの「ビッグヒーロー」の誕生で勢いづく明石商が、悲願の夏甲子園をたぐり寄せる。【浦田由紀夫】

 ◆大西進太郎(おおにし・しんたろう)1999年(平11)1月7日、明石市生まれ。小1の時「藤ケ丘ひまわり」でソフトボールを始める。大久保中では明石ボーイズに所属。主に遊撃手だが明石商では打撃を買われ外野手登録。163センチ60キロ。右投げ右打ち。血液型A。