花巻東(岩手)は、4年前の東日本大震災で母を亡くした大船渡市出身の3番、千田京平外野手(3年)が2安打1得点と活躍し、専大松戸(千葉)を破った。

 天国で見守る母へ贈る活躍だった。花巻東の3番打者、千田が3、5回と2本の単打でチャンスメーク。3回には3点目のホームを踏んだ。花巻東の初戦突破に貢献し「お母さんも喜んでくれると思う」としみじみと話した。

 11年3月の東日本大震災で、女手一つで育ててくれた母博美さん(享年46)が岩手・陸前高田市の職場で亡くなった。チーム寮から、宿泊先のホテルの部屋に母の写真を持ち込んだ。甲子園の勝利を報告するためだ。球場入り前に「行って来ます」と声をかけた。09年菊池雄星(西武)を擁した花巻東を、テレビ中継で見ていた博美さんの「甲子園に出たら応援に行きたい」という言葉も思い出した。

 試合中は「母のことは忘れていた」と勝利に必死になった。生後2カ月の時、父宰平(さいへい)さんが急逝。両親を失った震災後は大船渡市内の母の兄、大畑養一さん(53)の自宅に身を寄せた。「まず勝ててうれしいです」と感謝の言葉を忘れない。大畑さんも「2本も打って良かった。みんなに恩返しできたのでは」と喜んだ。アルプス席には両親の親戚24人が集まっていた。

 「ただいま。今日勝ったよ」。千田は母の写真に、そう伝える。だが夢は先にある。「まだ試合は続く。これからも活躍したい。チームの目標は日本一」。博美さんへもっといい報告をするため、勝ち続ける。【久野朗】