3季連続甲子園出場の静岡が東海大甲府(山梨)に競り負け、初戦で涙をのんだ。先発の村木文哉投手(2年)が4回7失点と打たれ、リードを許した。7回に追いついて勢いづくかと思われたが、8回に安本竜二主将(3年)の失策からピンチを広げ、5回からの救援で好投していた村松遼太朗投手(3年)が決勝打を浴びた。今春のセンバツで8強入りし、今大会は日本一を目指していた静岡だったが、2年連続の初戦敗退となった。

 照明がともる午後6時8分、静岡の敗退を告げる試合終了のサイレンが鳴り響いた。数人の選手の両目からは涙があふれる。1点を追う9回の攻撃前には笑顔も見られ、最後まであきらめない姿勢は貫いたが、あと1点届かなかった。

 最後のアウトを見届けると安本主将は「これで終わりなのか」と頭をよぎった。静岡の野球部訓には「甲子園優勝」とある。目標ではなく、果たさなければならない責務だった。同主将は「全国で戦える力があったのに…、悔しい」と言葉を振り絞った。

 序盤から打撃戦だった。1回に1点を分け合い、2-1とリードした3回表に4失点。4回にも2点を失い、打たれたエース村木は降板を余儀なくされた。4-7と3点を追う6回には、鈴木将平(2年)が一塁後方への飛球で三塁からタッチアップ。続く7回に犠飛と適時内野安打で追いついた。勢いづくかと思われた直後に勝敗の分岐点があった。

 8回表。相手が無死一塁からのバント処理で三塁手の安本がまさかの悪送球。一、三塁となり、2番手の村松が決勝打を浴びた。安本主将は「8回のバントを自分がしっかり処理できていれば…」と唇をかんだ。1人で責任を痛感する主将を横目に、栗林俊輔監督(42)は「安本が引っ張ってくれたチーム。1つのプレーでは責められない」とおもんばかった。

 昨夏大会も終盤に失策から失点し、1点差で敗れた。安本主将をはじめ、数多くの選手が甲子園での勝利を目指してきた1年間だった。圧倒的な打撃力で秋季を勝ち抜いて春のセンバツでも8強まで進出。安本主将は「優勝するつもりでやってきた」と悔しさで流れそうな涙をこらえるように話した。

 現チームの活動は終わったが、26日から新チームの「秋」が始まる。安本主将は「みんなに感謝しているし、後輩たちには自分たちのセンバツ8強を超えてほしい。もっと強いシズコウになってほしい」とバトンを託した。【加納慎也】