下関商(山口)が、エース左腕、森元秦投手(3年)の延長11回完投&サヨナラ打の活躍で、20年ぶりの甲子園勝利を挙げた。森元は139球を投げ切り、3失点に抑えると、延長11回2死二塁から中前にサヨナラ打を放ち、白樺学園(北北海道)を破った。雷雨のため、56分間の中断を挟んだ熱戦を制した。

 8番森元のたたきつけた打球が、中前に抜ける。延長11回2死二塁。「最後は気合でした。去年負けてからみんなで努力を続けてきて、野球の神様がくれたチャンスだと思いました」。133キロの外角直球をはじき返すと、二塁走者が生還。ガッツポーズで歓喜の輪に吸い込まれた。

 サヨナラ打を呼び込んだのも、エースの熱投だった。8回に同点2ランを浴びたが崩れない。直球は120キロ台だが、カーブ、チェンジアップを散らして、緩急をつける。「中断前は調子が悪かったんですが、中断でいい感じに修正できました。勝つイメージをずっと持っていた」と言った。

 雷雨のため、4回表から56分間の中断があった。リズムを崩しかねない「間」だったが、談笑してリラックス。139球の完投に「甲子園でなかなか経験できない、中断もナイターもできて良かった」と、笑い飛ばす余裕があった。

 63年夏の甲子園で準優勝した古豪も、20年間甲子園から遠ざかっていた。伝統の「S」マークをユニホームの左胸につけた戦い。試合前のベンチでは、選手全員が「S」の文字を触り、集中力を高める。歴史と伝統を感じながら、20年ぶりの勝利をつかんだ。

 佐々木大輔監督(48)は「ランナーを出してからも抑える本来の投球をしてくれた。バッターとしても期待していた」とたたえた。森元は、ごみ拾いやスリッパ並べなどを積極的に行い、私生活からエースの自覚を見せる。「(OB)池永(正明)さんが背負っていた1番。恥じない投球がしたかった」と喜びをかみしめた。【前田祐輔】

 ◆完投勝利&サヨナラ打 下関商先発投手の森元がサヨナラ打。自らのサヨナラ打で完投勝利は11年北海 戦の尾松義生(明徳義塾)以来。