花巻東(岩手)は、「花巻東のセナ」熊谷星南(せな)内野手(2年)が先制適時三塁打を放ち、春夏連覇を狙った敦賀気比(福井)に18安打を浴びせて勝利した。

 外角のボールを狙った花巻東打線が、敦賀気比の春夏連覇の夢を砕いた。エース平沼が完投した明徳義塾(高知)との1回戦のVTRを徹底的に研究。3回に右越え先制三塁打など、3安打2打点の「花巻東のセナ」こと、4番・熊谷は「内角を攻め切れていない。スライダーを見極めて外を狙った」と明かした。速球を狙い打つ作戦で、甘い変化球も見逃さなかった。

 1回戦の4人から、先発の右打者が6人に増えた。佐々木洋監督(40)は「左では平沼君を打てないと思い、右を増やした」と意図を説明した。その6人全員が、打席のホームベース寄りギリギリに立った。同監督は「インコースは捨てて、見逃し三振でもいい」と、逆方向への打球を指示。敦賀気比との対戦が決まった直後から、打撃マシンを通常より3メートル近づけて、スライダーを見極める練習も繰り返していた。

 4回までに4点を奪い、センバツ全5試合で完投した平沼をマウンドから引きずり降ろした。5、6回と2番手山崎にパーフェクトに抑えられたが、左翼に就いていた平沼が7回から再登板。熊谷は「代わって、また点が取れると思った」と笑った。7回に1点、8回に3点を追加した。18安打中15安打が右打者。そのうち10本が中堅から右方向へ飛んだ。4安打の2番・福島は「逆方向の打球が徹底できた」と胸を張った。

 2年前の夏も、3回戦で安楽(楽天)擁する優勝候補・済美(愛媛)を撃破して4強入り。「敦賀気比に勝ったことを自信にしたい」と熊谷。「岩手から日本一」を掲げる花巻東が、その夢へ大きな弾みをつけた。【久野朗】

 ◆春夏連覇を阻止 センバツ王者の敦賀気比が花巻東に敗れ、8校目の春夏連覇ならず。東北勢による連覇阻止は13年1回戦の仙台育英11-10浦和学院に次いで2度目。

 ◆岩手県勢最多安打 花巻東が18安打。岩手県勢としては春夏を通じて甲子園最多安打となった。これまで最多は94年夏の盛岡四が山陽戦で放った16安打。