花巻東(岩手)が今春センバツ王者の敦賀気比(福井)を破り、16強入りした。先発加藤三範(2年)とエース高橋樹也(3年)の両左腕が3失点、自責ゼロの好リレー。福島圭斗捕手(2年)が相手打者の癖を頭に入れて好リードし、守備位置も打者に合わせて変えるなど、徹底的な戦前分析が功を奏した。3回戦は第11日第3試合となり、相手校は今日14日にも決まる。

 エース高橋がこん身の球で試合を締めた。5点リードの9回裏、1死から連打を浴び一、二塁。5回に3ランを放っていた敦賀気比の主将篠原に打席が回ると、球場全体から自然と拍手がわき起こる。“奇跡”を期待する、まるでアウェーの雰囲気だった。

 「(捕手)福島が“気持ち入れろ”と胸に手を当てるジェスチャーをしてくれたので、全力で思い切って投げました」。篠原を初球の135キロストレートで遊飛、最後も直球で三ゴロ。4回7安打と苦しみながら無失点で救援した。

 この日の先発は聖地初登板の背番号17加藤。「後ろに(高橋)樹也さんがいる」と最初から全力で飛ばした。強打者が並ぶ打線で特に警戒したのが、センバツ準決勝で2打席連続満塁ホームランを打った松本。2回の最初の対戦で空振り三振を奪い「自信になった」。次の打席も同じく空振り三振。軸足を地面に着けてからワンテンポ遅れて腕を出す、出どころの見にくい投法がはまったのか、4回まで無安打に抑えた。5回に3失点(自責点はゼロ)し、その回で降板したが、佐々木洋監督(40)は「初めての登板でがんばってくれた」と期待以上の好投をたたえた。

 両左腕を好リードしたのが、4安打と打撃でも貢献した捕手福島だ。敦賀気比はセンバツで優勝した分、それだけ多くのデータがある。福島はこれまでの全試合を頭に入れ、前夜高橋と加藤それぞれと1時間ずつ、配球シミュレーションを行った。「加藤はまっすぐで押せた。樹也さんはスライダーで三振を取れたのが良かった」と納得の表情だった。

 データに基づく、徹底した守備も光った。二塁を守る熊谷星南(2年)は「左打者は(右方向へ)引っ張るので一、二塁間をしめていた」と明かす。実際、篠原、平沼ら左打者の守備では熊谷が一塁側に寄るなど、打者に応じた極端な守備位置でヒットを食い止めた。

 佐々木監督の長年の目標は「40歳までに日本一になる」。今年がその最後のチャンスだ。先月27日、監督の40歳の誕生日。3年生全員はバットとともに「自分たちは日本一になります」と言葉を贈った。チームと東北勢悲願の日本一へ。春を制した敦賀気比から、大きな1勝を挙げた。【高場泉穂】