小山台が10点差をひっくり返し、劇的な勝利を収めた。第98回全国高校野球選手権の東東京大会、立教池袋戦、1回に10点を失ったものの粘り強く点差を縮め、8回に5番宮川慶悟内野手(3年)の満塁本塁打で大逆転した。14年に都立勢初のセンバツ出場を果たした小山台が、14-12の熱闘を制した。

 コツコツ反撃し3点差になった8回、ドラマを演じた。1点を返し、なお1死満塁。奇跡を待つ応援席の大声援に、打席の宮川は奮い立った。「こんなに応援してもらっているんだから、ここで打たなきゃ…」。カウント1-2からの5球目だった。高めに入った直球を、思い切り振り抜いた。「打った瞬間は、ヒットかなと。まさかホームランとは思いませんでした」。一塁を回ったところで塁審の動きを見て、人生初の逆転満塁本塁打に気がついた。12-11。ついにリードを奪った。

 最悪の1回だった。先発高田健が2死二塁から先制を許すと3つ目のアウトが取れない。打者15人の猛攻で、いきなり10点を失った。戻ってきたナインに、福嶋正信監督(60)は「奇跡を起こそう」と鼓舞した。宮川が「ここ最近の練習試合は、逆転勝ちが何度かありました。救援した矢崎も調子が良かったので、いけるかなと思っていました」。諦める空気はなかった。

 中断も味方にした。3回裏2死満塁、大ピンチの場面で雨天中断となった。福嶋監督は、ベンチで再開を待つナインに14年夏の石川大会で起こった「ミラクル星稜」の例を話した。「星稜も(9回に)9点を取って勝った。今から15点取れば勝てる」。再開すれば、勝てる-。逆転のイメージは最高潮に達した。

 「10点差からの逆転は、23歳で監督を始めて初めてですよ」と福嶋監督は興奮を隠さない。8回の劇的アーチについては「全員の力で勝った。全員で打ったホームランだと思います」と、諦めなかったベンチ全員の気持ちが、飛距離を生んだと力説した。うれしい大逆転にも宮川は「自分たちの目標はもっと上」と、大逆転は奇跡ではないと言わんばかり。都立の星は、もっと輝いてみせる。【杉山理紗】