「被害者」の西川は焦った。「7番のユニホームがないと試合に出られないかもしれない。怖いな」。すると村上直心部長があることに気付いた。「17番の背番号が確か2枚あった」。埼玉大会は選手の背番号を各校が用意する。そこで「17」の「7」を切り抜き、ミシンを使ってユニホームに貼り付けた。本来の「7」よりやや小さめの背番号にはなったが大会本部も了承。無事、出場にこぎつけた。「朝の4時過ぎまでかかりました。間に合ってよかった」と村上部長は苦笑いだ。

 西川は「3番左翼」でいつものように先発出場。第1打席こそ好球を逃し遊飛に倒れ、ユニホームの呪いに苦しんだ。しかし第2打席で中前適時打。第4打席で中前安打を放つと9回の第5打席で中堅へランニング本塁打を放った。

 「ユニホームを返してほしいです。でも最後の打席(本塁打)で除霊できました」。思わぬ事件を乗り越え、花咲徳栄が3年連続甲子園へ4回戦を突破した。【福田豊】

 ◆西川愛也(にしかわ・まなや)1999年(平11)6月10日生まれ、堺市出身。小2で野球を始め金岡南中時代は浜寺ボーイズでプレー。3年夏に全国大会出場。好きな選手は現役時代の巨人高橋由伸監督。家族は両親と弟。180センチ、82キロ、右投げ左打ち。