背番号1の木村が流れを呼んだ。内角の速球で打者の上体を起こさせて、外角へスライダー。仙台の石垣光朗監督(54)が「狙い球が絞れなかった」と脱帽した投球術。宮城NO・1投手に投げ勝ったエースは「こんな機会はないんで。楽しもうとプラスに捉えた」と笑った。被安打6の完封は連打を1本も許さず、三塁を踏ませなかった。

 何事にもポジティブだ。日程通りに試合を行うチームがいる中、仙台三は雨天順延の影響を受けた。3回戦が25日。勝ち上がるたびに試合が続き、この日の準々決勝で3連戦。チームスタッフから告げられたことを、木村が明かした。「勝った次の日に試合ができると言われた。勢いがあるし、不利な日程を有利と思えばいいと。意識の転換ですよね」。4回の先制点につながる右前打を放った3番岩渕央卓(ひろたか)捕手(2年)は「昨日から楽しみにしていた。いい投手なので」。常に前向きだからこそ、接戦にも負けない。

 現チームのスローガンは「全笑一勝」。昨夏初戦敗退した1つ上の代が、劣勢になると「顔色がみるみる悪くなった」(佐々木監督)。それを選手が反省し、試合中に下は向かない。最終回、木村は笑顔を見せて投球したほどだった。

 ノーシードだが4回戦で柴田の好投手、岩佐公太(3年)を攻略して、準々決勝は佐藤隼を撃破した。佐々木監督は「しっかり自信を持っていいのかなと思います」。ポジティブで笑顔の絶えない、ベスト4に残った唯一の公立校。真夏の杜(もり)の都に、旋風が巻き起こった。【久野朗】