01年甲子園に出場した「都立の星」城東が、“走らない野球”で逆転勝利し、2年ぶりの16強進出を決めた。

 “走らない”と言っても盗塁をしないわけではない。この日も3盗塁をマーク。01年の甲子園に「4番三塁」で出場した内田稔監督(34)が、昨秋母校に監督として復帰し、練習メニューを一変させた。平日のうち校庭を全面使えるのは木曜日の1時間半のみ。その他の日はサッカー部、ソフトボール部、陸上部と共用する。限られた時間の中で、野手が長距離を走る時間を極端に減らしたのだ。

 「単純に走るだけだと面白くないじゃないですか。体を大きくするのと、長距離を走るというのは本来は矛盾している」と言う。

 持久力が必要な投手は別だが、野手は約2時間のメニューの中で、打撃練習に割く時間を増やした。

 「言い方が悪いかもしれませんが、野球はおっさんでもできますから」と技術の強化に特化。校舎建て替え中のためトレーニング室もなくなったが、自分の体重を使う自重トレーニングを中心に体を鍛え上げる。選手たちは体重増加にも取り組んでいる。

 内田監督は城東卒業後に明大に進学し、野球部に入部した。高島、足立東の監督を経て、母校に赴任。「5~6年前はたくさん走らせたこともあった」と言う。指導者としての経験を積みながら「バランス良く、効率よく」と都立ならではの練習を模索し、結果につなげている。

 初戦の3回戦で就任後初勝利を飾ると、この日は3点を追う7回に5点を奪って逆転した。「高校生は崩れる。終盤勝負とずっと言ってきました。終盤にドラマは起きる」と言った。

 1点返した直後の7回1死満塁から7番国井雅貴外野手(3年)が左中間を破る逆転の3点適時三塁打を放った。「(内田監督には)下半身の使い方を言われます。夏の大会は緊張するけど、楽しくやることが一番。ミスしても次に切り替える」と安堵(あんど)した。内田監督は「彼は精神的に弱いところがあったけど、よくやってくれた。この大会に入って打ってくれている」とたたえた。母校を率いる夏は「何とかしなきゃ」という思いでいっぱいだ。