西兵庫大会の決勝で明石商が、夏の甲子園初出場切符をつかみ取った。昨年まで3年連続決勝に進出も、あと1歩で敗れていた。先発、加田悠真投手(3年)とリリーフの福谷航太投手(3年)が好投。姫路工を振り切って、悲願を達成した。

 狭間善徳監督(54)は優勝の喜びをかみしめるように、宙を舞った。閉会式後。激闘が終わったグラウンドで、OBや選手に促され、胴上げが行われた。「1回戦で敗退していたようなチームがここまで来た。優勝はうれしい」。07年に監督就任。念願の瞬間にひたった。

 決勝の相手は、プロ注目投手を擁し、強豪の東洋大姫路を下した姫路工。思い切った手に出たのは3-3で迎えた6回1死三塁のピンチだった。狭間監督は「どこで継投するかが勝負だと思っていた」と先発の加田から福谷に継投。采配は当たった。福谷は後続を断って切り抜けるばかりか、9回まで2安打無失点に抑える好投を見せる。

 狭間監督は「野球は確率のスポーツ」だと話す。「バント、エンドラン、盗塁など、練習で全てを準備し、試合で一番確率の高い選択をしている」。決勝でもこの狭間采配がさえわたった。同点で迎えた7回一死、四球で出た走者を犠打で二塁へ。すると後続が中前へ適時打を放ち、勝ち越し。すかさず、適時打で一塁にいた走者が盗塁で二塁に進塁。すると後続が二塁打を放ち、走者生還。「うちは塁を進めて、少ないチャンスで打つチーム」。指揮官の狙い通りに得点を重ね、勝利した。

 明石商には129人もの野球部員がいる。狭間監督は、試合後、球場の外で「20人の選手だけではない。チームとして一丸となった勝利」と全員の選手をねぎらい「甲子園への道は通過点。日本一目指すぞ」と、高らかに宣言した。100回記念大会でようやく手にした夏切符。確率野球で、高校野球の頂点を目指す。【鶴屋健太】