<全国高校野球選手権:龍谷大平安3-2鳥取城北>◇11日◇1回戦

 サヨナラ勝ちを決めたボールは左翼線に転がった。龍谷大平安100勝目となる記念ボール。鳥取城北の左翼手、吉田修平(3年)は走者が生還し、終了を告げるサイレンが鳴る中、フェンスに達したボールを追った。「打った相手に敬意を払って、最後までやり遂げようと思いました」。

 第19回大会(1933年)で延長25回を戦い抜いた中京商-明石中のサヨナラボールは、味方選手が拾った。中京商が無死満塁と攻め、二ゴロの間に本塁を陥れた。送球を受けた明石中の福島安治捕手が悔しがってグラウンドにたたきつけたそれを、中京商の杉浦清が拾った。「ホームに走り寄ったら、転がって来たんで」の発言が残る。のちに学校に寄贈したという。

 吉田は本塁前に整列する際、龍谷大平安の北村涼二塁手(2年)にそっとボールを手渡した。北村は「頑張ってくださいと声をかけられました。次も自分の役割を果たしたいです」。ボールは松田憲之朗主将(3年)を経由して、男泣きする原田英彦監督(58)に渡された。【米谷輝昭】