甲子園を沸かせた「二刀流」が、「三刀流」で大観衆を魅了した。野球のU18(18歳以下)アジア選手権(9月3日開幕、宮崎)で連覇を狙う高校日本代表が28日、神宮球場で大学日本代表との壮行試合に臨んだ。試合には敗れたが、大阪桐蔭・根尾昂内野手(3年)が存在感を見せつけた。国内外約90人のスカウトが見つめる中、打っては三塁打を含む4打数2安打。久々の外野守備も軽快にこなせば、8回にはマウンドに上がり、3者凡退の好投。神宮が「NEOTIME」と化した。

インパクトの瞬間、神宮が沸いた。6点を追う5回無死、根尾が「センターライナーだと思った」打球は、足を滑らせた中堅の立命大・辰己の頭上を軽々と越えた。二塁ベースを回って、スピードアップ。大歓声の中、猛烈なスライディングで三塁に到達した。

チーム初安打も根尾だった。2回1死、138キロの直球に反応。立大のエースで高校の先輩の田中から左前打を放った。大学日本代表の生田監督を「パーンという、乾いた音を聞いて、(現巨人監督の)高橋由伸君を思い出した」と驚かせる一打で「NEOTIME」が幕開けした。

結果とともに、内容も濃かった。「投手が素晴らしいので、1球で仕留めようと思った」と話したが、初対戦の相手に対し、2安打ともに最初のストライクを一振り。三塁打は早大のエース小島からで、東京6大学リーグ屈指の両左腕から安打を放ち、ドラフト1位候補の力を示した。

「三刀流」でも、インパクトを残した。この日は本職の遊撃手でも、投手でもなく、右翼手でスタメン出場。2年夏の3回戦の仙台育英戦以来だったが、無難にプレーし、チームに新たなオプションを加えた。

「NEOTIME」のクライマックスは、マウンドで迎えた。8回に登板し、チームでは2回以来の3者凡退。自己最速タイの148キロをマークし、明大・逢沢は変化球で空を切らせた。「任せてもらっているので、それに応えたいなと。与えられたところで貢献したいです」と投打でのフル回転を誓った。

試合に敗れても、スタンドを沸かし続けた。6回は直球、9回には変化球を空振り三振。結果が出なくても、豪快な空振りで観客が沸くのはスターの証しだった。「(高校では)見られない景色を見させてもらった。発展途上。今のままでは勝ち抜けないと思うので、1日1日成長して、優勝したいです」。「三刀流」でアジアの頂点を奪い取る。【久保賢吾】