来春センバツの重要参考資料となる秋季高校野球東北大会が今日12日、秋田・こまちスタジアムなどで開幕する。

花巻東(岩手2位)は、昨秋の東北大会準優勝で注目を浴びた最速142キロ右腕・西舘勇陽(2年)が、初となる1番を背負って復活を期す。今春以降は腰痛などの影響でフォームを崩し不調も、今大会前に調子は急上昇中だ。中森至(2年)、松本遼大(1年)、古川端晴輝(1年)の投手カルテットの中心となり、3季連続の甲子園出場に導く。11日の前日練習は、雨天のために各校が同球場室内練習場で調整した。

西舘が花巻東の新エースとして、先頭に立つ気概を言葉にした。同校の出世番号「17」から今秋の県大会では「11」へ。今大会前に「1」を初めて受け取り「秋の地区大会では1をもらえず悔しい思いでした。素直にうれしい。翔平さんに憧れて同じ道を選んだので、いただいたからにはエースらしい姿を見せたい。それが支えてくれる人への恩返しになる」。菊池雄星(現西武)、大谷翔平(現エンゼルス)と継承してきた17→1の重責を担う、力強い所信表明だった。

昨秋の東北大会決勝で聖光学院(福島)に惜敗したが「新怪物」として期待された。だが、一時は手術も検討されるほどの腰痛に悩まされ、春夏の甲子園ではふがいない結果。さまざまな治療により、今秋になって回復傾向になると、フォームも固まってきた。歩幅も6足ちょっとから7足弱へ広げ、下半身の粘りが戻りつつある。

今月上旬の関東遠征では国学院栃木相手に7回2失点。「ボールも落ちずに投げられたし、直球で詰まらせることができた。疲れも残らなかった」と球速も上がって手応えをつかんだ。不調の中、同学年の大船渡・佐々木朗希投手が157キロを記録するなど「岩手の怪物」の異名は完全に奪われた。「やはり自分も負けたくない。今大会で復活…。とにかくチームを優勝させたい」。二人三脚で寄り添ってきて佐々木洋監督(43)も「かなり下半身が使えるようになって良くなった。長いイニングも投げられる。大会前に大きな収穫」と太鼓判を推した。

投手転向してエース番号を背負ってきた左腕・中森も「強気な投球をしたい」と気勢を上げた。長身右腕の松本は「17」を背負い「角度を生かしたい。ツーシームとシュートに自信あります」。左中指のケガが癒えたスライダーが武器の左腕・古川端も「体は小さいけれどマウンドに上がったら性格が変わります」とニヤリと笑った。

今秋から佐々木監督の意向で丸刈り頭の強制をやめた。西舘も少し伸びつつある髪形同様に、再び成長曲線を描き始めた。初戦(明日13日)は昨秋決勝と同じ聖光学院(福島1位)。センバツ切符をつかみ“怪物争い”にも宣戦布告だ。【鎌田直秀】