龍谷大平安(京都)の左腕エース野沢秀伍(3年)が、盛岡大付(岩手)に12安打されながら1失点完投で3年ぶりのベスト8に導いた。

勝負の転機はいきなり初回に訪れた。1死後に3連打され満塁。次打者のカウントが3-1となり「やばいと思った」が表情には出さない。逆に「打たれたらしょうがない。強気にいった」とストレート勝負で連続三振に切り抜けた。その後も打たれながら粘り、最少失点でマウンドを守った。お立ち台で「12安打されて1失点は、いい投球だったと思う」と胸を張った。

津田学園(三重)との初戦で延長11回完封。その試合2日前に胃腸炎を患い「下痢のせいか力が入らなかった」という中での熱投だった。この日、体調に問題はなかったが、立ち上がりは「力んでしまった」。1回のピンチを切り抜けた後、原田英彦監督(58)から指摘された体の開きの早さを修正する能力を示した。

原田監督から「おじいちゃん」といじられるが、エースの風格を身につけてきた。昨夏の甲子園大会中。宿舎のサウナで居合わせた原田監督からいきなり、腕立て伏せ50回を命じられたという。「息がしんどかったです」という苦行の後、「川口さんの話をしていただきました」。

川口知哉。平安を97年春8強、夏準優勝に導いた絶対的なエース左腕は「練習の鬼だった」。原田監督は「体もおじいちゃんで元気がないから」と笑い、「本当のエースになりたかったら川口を目指せ、と。だれもが認めるエースだった」と意図を明かした。野沢は「自分は体も小さいし、それぐらい練習をしろということだったと思います」と親心をくみ取り、今大会で成長した姿を披露した。

真っすぐは130キロ台そこそこだがキレがあり、勝負球にチェンジアップ。2試合20イニングで1失点は安定感の証明だ。「おじいちゃん」と呼ばれることも「それが普通なんで大丈夫です」。17歳の「おじいちゃん」が、名門のエースとして君臨していく。