器用な指揮官が相手投手になりきり、明豊がセンバツ初のベスト8に駒を進めた。

打線は相手先発の197センチ左腕・阿部剣友(2年)にてこずり、3回まで1安打。4回、無死一塁で相手投手が右横手投げの太田流星(3年)に代わると、待ってましたと言わんばかりに攻勢に出た。犠打で二塁に走者を進め、2死二塁から4番野辺優汰内野手(3年)が右中間へ適時三塁打を放ち、先制に成功した。

続く5回は、太田対策で抜てきされた甲子園初出場初スタメンの左打者、6番山田昭太外野手(2年)が右翼線へ二塁打。8番若杉晟汰投手(2年)の中前適時打で追加点を奪った。投げてはエース左腕若杉と右腕大畑蓮(3年)の継投で、反撃を1点に抑えて逃げ切った。

川崎絢平監督(37)が相手投手になりきった。試合2日前から2日間、警戒する太田を模倣して、右横手投げで打撃投手を務めた。打者約12人を3巡、約80球を投げ込んだ。「選手の起用も含めて、どんな反応をするのか、正面(マウンド)から見た中でどういう感じか見たい」。普段から大会前は、川崎監督がいろんな投手になりきるという。そこで選手の適性を見極め、この試合では「いい感じでバットを振れていた」という山田を起用した。選手としては智弁和歌山の遊撃手として97年夏に甲子園優勝も経験。「内野手なので(投げ方は)上も下も横も投げられる」。紅白戦では完投することもあるという川崎監督を、この日2安打の表悠斗主将(3年)は「練習でいいピッチングをしてくれました。そっくりでした」と感謝した。指揮官は打席の立ち位置も少し前を指示し、技巧派に対して変化の少ないところで捉えるように徹底。追加点の5回攻撃前にはベンチ前で「必ず打てるストライクはベースの上を通る。追いかけるな」と、ジェスチャーを交えアドバイス。直後に、太田対策で起用した山田が貴重な追加点を演出するなど、采配がはまった。

1回戦では、横浜の大会注目左腕及川を攻略し、この日は昨秋の明治神宮大会王者の技巧派・太田を打ち崩した。

この日の勝利で同県出場の大分と合わせ、大分県勢のセンバツ3勝は76年以来43年ぶり。県勢のセンバツ通算20勝目にもなった。

春夏通じての最高成績は、現ソフトバンクの今宮健太を擁した09年夏のベスト8。川崎監督は「初めてのベスト4は目指している。ぜひ、その壁を越えたい」と力強く語った。