山梨学院のデスパイネ、野村健太外野手(3年)の春は終わった。3安打を放ち、吉田監督は「野村は機能していた」と評価したが、期待は安打数では満たされない。持って生まれた飛距離という才能を、この日は咲かすことはできなかった。

勝ち越し機の5回1死一、二塁。筑陽学園は小刻みに継投。野村の場面では3番手西舘。野村の信条はファーストストライクを打つ。しかし、この打席では1ボールから、114キロの変化球を見逃した。「打てばホームランでした。手が出ませんでした」。実直に精神的に攻めの姿勢を保てなかった点に触れた。

初戦札幌第一戦では、初球ファウルで攻めた第2打席で2球目を左中間最深部へ。第6打席は初球ストライクをバックスクリーンへ。これが本来の野村の強みだが、甲子園での競った場面で心が乱れた。「甲子園の雰囲気にのまれ、焦りました」。最後は追い込まれてからチェンジアップで空を切らされた。

初戦で大会タイ記録の24安打を浴びせた強打の中心には常に野村がいる。打順は3番でも4番でも、試合を決める1発を打てるのが野村の最大の魅力だ。初戦7打数5安打の2番菅野秀斗内野手(3年)も「自分のバッティングができませんでした」と3打数1安打に終わり、肩を落とした。

初戦猛打の影響で打線が沈黙という構図ではなく、接戦で主砲野村が決めきれなかったのが響いた。それだけの影響力、相手投手へのダメージを、野村のバットは秘めている。【井上真】