<センバツ高校野球:習志野6-4明豊>◇2日◇準決勝

野球記者歴40年の米谷輝昭記者のコラム「ヨネタニー'S・ファイル」。試合の明暗を分けたワンプレーに注目します。

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習志野の三塁走者、根本翔吾外野手(3年)は捕手の送球を注視していた。3回2死一、三塁。3球目に一塁の角田勇斗遊撃手(2年)がスタートすると、直後に本塁にダッシュした。「投手(の身長)より高さが出ていたんで、行けると思って、自分の判断で行きました」。根本が話した。

大胆な重盗を、ものの見事に成功させた。根本は捕手の送球の高低で、行く先を投手ではない、二塁と判断した。明豊の成田武蔵捕手(3年)は「あんなケースは、いつも二塁に投げている。投げた瞬間に走られた。相手のスタートがうまかった」と脱帽した。

2死後の盗塁だった。二塁を狙った角田が刺されていれば、攻撃は終わっていた。角田は「盗塁のサインです。スタートが遅れたんで自分がアウトにならないように、工夫しました」。二塁前で、スピードを緩めた。根本を生かそうとする冷静な判断もあった。

「『行った』と声を出したんですが、通らなかったと思います」。明豊の野辺優汰三塁手(3年)が振り返った。習志野ブラスバンドの「美爆音」も後押しして、ここから逆転劇が始まった。【米谷輝昭】