星稜の福本陽生内野手(3年)が「タイブレークの悪夢」を振り払った。延長14回1死一、二塁。サインはバントではなく強攻。林監督に信じてもらえたのがうれしかった。甘いスライダーを一振りすると、打球は甲子園の深い左中間席に飛び込んだ。

「期待してもらっているんだと思った。自分の1発で試合を決められたのがうれしい。みんなの顔を見てうれしかった」と表情を緩めた。本塁に戻ってくると、奥川から「ありがとう」とお礼を言われた。

前チームからレギュラー格で、今の3年生では最も力のある打者だった。センバツ後に調子を崩し、石川大会は10打数無安打でついにレギュラーを外された。「迷惑をかけた」と陽気な男が表情を曇らせた。

大阪入り後、チーム練習で訪れた近大グラウンドで、同大に進んでいた昨年の主将、竹谷理央外野手が激励に来た。尊敬する先輩にスイング軌道を助言され、復調のきっかけをつかんだ。2回戦は3安打。そして、この日もサヨナラ弾を含む3安打と爆発した。

星稜では数少ない東京からの野球留学。出身の東練馬リトルシニアはこの日、中学硬式日本一を決めるジャイアンツカップの決勝を戦った。その試合前の練習中、サヨナラの劇弾が生まれた。「福本くんが打った!」。東京ドームでの晴れ舞台を控えた選手や指導者は大興奮。星稜での活躍が、後輩の希望になった。

「去年の負けたシーンがよぎった」と福本。済美(愛媛)との2回戦でタイブレークの末、サヨナラ逆転満塁本塁打で敗れた1年前の悪夢を、バットで断ち切った。【柏原誠】

◆福本陽生(ふくもと・はるお)2002年(平14)3月21日、東京都出身。幼稚園年中から八幡山レッドソックスで軟式野球を始め、小学3年から硬式の東京世田谷ボーイズに所属。緑丘中時代は東練馬リトルシニアに所属し内野手。星稜では1年秋からベンチ入り。遠投100メートル。50メートル6秒5。高校通算21本塁打。173センチ、80キロ。右投げ右打ち。