今秋ドラフト候補の明石商の最速151キロ右腕・中森俊介投手(3年)が、県独自大会初戦に先発し、3回無安打7奪三振の貫禄ピッチで快勝発進を導いた。

視察した阪神和田豊テクニカルアドバイザー(TA=57)は、雨でぬかるんだマウンドで見せた適応力を高評価した。

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バッドコンディションでも顔色は変わらない。雨でぬかるんだマウンドが、中森の能力の高さを際立たせた。雨で試合開始は約30分遅れ。「(マウンド)は普通でした。雨の日は苦手なので、いつも以上に下半身に力を入れました」。初回の先頭打者は146キロの外直球で空振り三振。そこから最速148キロを2度出すなど、速球主体に奪三振ショーを展開。打者10人から7三振を奪い、許した走者は四球の1人だけ。難なく悪条件に適応してみせた。

目を見張ったのは阪神和田TAだ。「下が悪い中でフォームが崩れない。右打者のアウトコースのまっすぐは、そう簡単には打てないね」。晴れの日だけではない。悪条件下で地元スターが見せた高い適応力が、さらに評価を高めた。

緩いマウンドでも、課題の「初回と先頭打者」を強く意識。狙い通り、3イニング全ての先頭を空振り三振。自粛期間中、重点を置いて磨いた直球を多投し、5三振を直球で奪った。「球が浮いていた。三振は取れたけど、四球を一つ出したのが課題です。まだまだ投げられると思う」。余力たっぷりの初陣となった。

負けられない理由がある。今夏の兵庫は最高5回戦で打ち切り。明石商は固定メンバーを除いた3年生全員が出場できるように、各試合ごとに選手を割り振った。8月甲子園での交流試合は、3月に登録した下級生を含めて戦う。今大会で勝ち進む以外、3年生全員に出番が回ることはない。

「点差が開かないと出られないメンバーもいる。チームのために無失点で抑えようというのがテーマでした」。1日でも長い時間を。力投を支えるのは、仲間を思う決意だ。この日は、途中出場した控え選手たちの安打もコールド勝ちにつながった。「3年間、苦しい練習を乗り越えてきた。サポートしてもらったチームメートに感謝の気持ちをプレーで表せられたら」。仲間のためにも、腕振る夏になる。【望月千草】

▽阪神和田テクニカルアドバイザー 高校生トップクラス。体も安定感があってフォームもしっかりしている。コントロールもちゃんとされてる。右のアウトコースのまっすぐはそう簡単には打てないね。(地元の素材)うちだけじゃなくて、どこもほしい投手だと思います。

▽オリックス乾スカウト この環境であれだけのパフォーマンスができるのは頭の良さを感じます。自分の体のコントロールがしっかりできている。