全国高校野球選手権の代替となる独自大会が全国各地で行われ、最後の夏となる3年生たちが意地を見せた。奈良では、3年生部員のみで挑む智弁学園の4番・大橋誠斗外野手(3年)が2戦連発の本塁打を放つなど、10安打11得点で5回コールド勝ち。昨秋は控えに甘んじていた4番の1発が、大勝を呼び込んだ。

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4番の仕事だ。初回、1死二、三塁の好機。4番大橋が直球を捉えた当たりはぐんぐん伸び、左中間スタンドに吸い込まれる高校通算13号の先制3ラン。「(投手を)楽にさせてあげたかった。先制点は自分で取らないとと思いました」と、主軸の仕事をやってのけた。8番錦織拓馬内野手(3年)も左中間3ランで続きこの回一挙6得点。4番の1発が、猛攻の口火を切った。

監督の熱い期待に有望株が応えた。巨人岡本らを育てた小坂将商監督(43)も「4年後(プロに)いってもおかしくない存在になってきた」と話す好素材だ。1年夏からベンチ入りも、けがもあり表舞台は遠かった。新チームで迎えた昨秋の県大会では、3試合連続でスタメン出場も結果は残せず、チームがセンバツ出場を決めた近畿大会では出番なく終わった。4番もエースも下級生。悔しさだけが募る中、小坂監督が手を差し伸べた。「監督さんが気づいてくれて。教わった打ち方で、打ち損じも減った」。そこから二人三脚。重心の置き方や内から外へさばくイメージを体得し、この日は2戦連発のアーチに加え、2四球で全打席出塁。「4番らしい仕事をしてくれた。交流試合でも結果を残してくれたら」と指揮官も目を細めた。

約束の舞台が近づく。中止となったセンバツの前には指揮官から「みんながびっくりする打球を打とう」という言葉をもらった。「甲子園でホームランが自分と監督さんの目標。この大会で準備していきたい」。最後の夏、約束の放物線を描く。【望月千草】

◆大橋誠斗(おおはし・せいと)2003年(平15)1月6日、奈良県生駒市出身。生駒小では生駒ドラゴンズ、緑ケ丘中では奈良西リトルシニアに所属。智弁学園では1年夏からベンチ入り。185センチ、93キロ。右投げ右打ち。