プロ注目で最速147キロ右腕の智弁和歌山・中西聖輝投手(3年)が9回3安打9奪三振完封で勝利に導いた。10球団15人のスカウトが視察する前で圧倒した。大阪桐蔭は綾羽(滋賀)に快勝。188センチの川原嗣貴投手(2年)が先発して6回2失点と力投した。29日の準決勝は智弁和歌山と大阪桐蔭が激突する。

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エースの嗅覚だった。試合中盤に雨が強くなると、中西は三振よりもゴロアウトを狙った。「天気が悪くてグダグダになると攻撃のリズムができない。打たせて取る。守備からリズムを作れればいい」。最速147キロの速球を持つが、普段よりも変化球を増やした。

それでも、神港学園を寄せつけない。5回、森岡啓斗内野手(3年)を外角カーブで空を切らせ、河瀬智哉内野手(2年)を速球で見逃し三振。3者連続三振を奪うなど3安打9三振で完封勝ちだ。10球団15人のスカウトが集結。阪神和田テクニカルアドバイザーも「テンポがいいし、球の切れで勝負するタイプ。追い込むのが早い。常にストライク先行で優位に立ちながら投球できる」と評した。

心に留める光景がある。同校は昨年12月にイチロー氏(マリナーズの会長付特別補佐兼インストラクター)の指導を受けた。中西には印象深い言葉があるという。「ちゃんとやってよ!」。練習終了時、スーパースターがナインに語りかけたひと言だ。「何かちょっと心が折れかけたときに『やらないといけない』と思い出しています」。圧巻のフリー打撃に目を奪われた。「すごく飛ばしていた」と振り返る。

9日の春季和歌山県大会決勝・市和歌山戦も9回1失点完投。節目の試合で会心の「1-0」勝利だ。29日の準決勝は大阪桐蔭と激突する。中谷仁監督(42)は「大事な試合、長いイニングを投げてくれている。(次戦へ)準備をしっかりしたい」と気合十分。昨秋はセンバツ切符を逃したがイチロー氏のエールも発奮材料だ。強い智弁和歌山が帰ってきた。【酒井俊作】

○…神港学園4番の三木勇人外野手(3年)が、智弁和歌山のエース中西に脱帽した。プロ注目の好打者だが、2回にスライダーを引っ掛けて三ゴロに倒れると、その後は2打席連続三振。「投げる球が全然違う。真っすぐの威力や変化球は全国レベル」。自身も先発して4回1失点と力投したが敗戦。大学に進学志望で、最終的に打者としてプロを目指す。24年ぶりに春の兵庫県大会を制した成果を夏につなげる。