札幌日大が北海道栄に3-2で競り勝ち、春全道初優勝を飾った。

1-1の5回表、先頭の前川佳央投手(3年)が左中間ソロ本塁打を放ち勝ち越し。7回1死一、三塁ではスクイズで1点を追加し、大技小技を絡め、1点差勝利につなげた。2年前からメンタルトレーニングを重点的に行い、心を強化。4戦すべて2点差以内と、継続した試みが接戦での粘り強さを引き出し、3季通じて道大会決勝での連敗を5で止めた。

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札幌日大が、しぶとさを武器に春の王座に立った。5回から登板した高谷が最後の打者を遊ゴロに打ち取ると、喜びを胸に秘め、夏を見据え、静かに勝利の味をかみしめた。監督として初の道大会制覇となった森本卓朗監督(40)は「子どもたちが準優勝の壁を破ってくれた。監督としても学校としても、歴史の1ページをつくることができた」と喜んだ。

26日の初戦(函館工戦)は6回に逆転、27日準々決勝(旭川大高)は9回サヨナラ、20日の準決勝(クラーク)は9回に追いつかれるも延長10回に勝ち越し、決勝戦も1点差勝利。すべて2点差以内の僅差を制し、主将の田中銀は「接戦をものにするということを目標としてやってきたので。少しずつ成果が出せた」と強い口調で話した。

19年秋全道まで道大会決勝5連敗。森本監督は「1点差で勝ちきれなかったり逆転されると巻き返せない。そういう弱さを克服させたかった」。現3年生が入部した2年前から、平昌五輪スピードスケート女子団体追い抜き、マススタート金メダルの高木菜那(日本電産サンキョー)らも取り入れたスーパーブレイントレーニング(SBT)を導入。その一環で、社員研修に用いられる「木鶏会」と呼ばれる勉強会を月1回実施。互いの長所を出し合う作業の中で田中銀は「マイナス思考から何事もプラス思考に切り替えられるようになった」と効果を口にした。

この春、森本監督は「自分たちで考える力をつけるため」と、監督からはノーサインにし、選手たちの自主性を生かす戦いを試みた。4戦計7盗塁で、4回に二盗から同点の生還を果たした祝田は「自分で考えないといけないので、相手の動きを、より研究するようになった」。心を鍛え常に先を見据え頭を働かせる。新たな取り組みでシルバーコレクターを脱した札幌日大が、次は初の夏の聖地を目指す。【永野高輔】

北海道栄の元監督だった札幌日大・折霜忠紀部長(63)は、古巣を倒しての優勝となった。選手としても前身の北海道日大で、75年に遊撃手として春夏連続、81年春に監督として甲子園に出場した“母校”との決勝戦だった。「そこは割り切って自分たちが勝つことだけを考えた。(札幌日大は)準優勝が続いていたから、何とかみんなで勝ってくれて良かった」と話した。