明秀学園日立(茨城)が山梨学院(山梨1位)を破り初優勝を果たした。

「てっぺん」を目指して、徹底的に得点を取りにいく。明秀学園日立の野球が決勝戦で実を結んだ。

先行されても粘り強く戦った。5回表に逆転と許し、4-6で迎えたその裏。石川ケニー外野手(2年)の右越えソロ本塁打、猪俣駿太投手(2年)の中越えソロ本塁打で同点に追い付き、試合を振りだしに戻した。

最後まであきらめない。7-7で迎えた7回には2死二、三塁から伊藤和也捕手(2年)の左中間への2点適時三塁打で勝ち越しに成功。2本塁打を含む13安打で粘り勝ちした。金沢成奉監督(54)は「ケニーの1発、猪俣の1発が大きかったですね」と流れを呼び込む2本塁打に、大きくうなずいた。

準決勝までは強打に小技も絡めた多彩な攻撃に、エース・猪俣の好投と、投打にかみ合った試合展開で勝ち上がった。しかし、決勝戦は打線で勝負した。そこには猪俣に頼らざるをえなかったチーム事情があった。

新チームは猪俣、石川の2枚看板で地区大会を勝ち上がった。しかし、茨城県大会1週間前、石川が肘を痛め野手に専念することに。猪俣は「自分1人で投げなければ」と、今大会は3試合全てに先発。前日の準決勝でも完投したばかり。金沢監督は「猪俣が疲れているのは知っていた。だからこそ、今日は打線で勝負したかった」と明かした。

石川の本塁打で波に乗った。1人で奮闘するエースのために。石川は「連投で疲れていたと思う。打ち負けないように、と思っていました」と、打撃で恩返しをした。

選手たちにスイッチを入れたのは、金沢監督の前夜のミーティングでのひと言だった。「俺を神宮大会に連れていってくれ」と、選手の前で敬礼して見せた。普段は厳しい監督のおちゃめな一面を見て、選手たちからは笑みがこぼれた。石川は「監督を連れていってあげたい。打ち勝って神宮に行こう、という気持ちになりました」と心をひとつにした。

明秀学園日立は、20日から開催される明治神宮大会に出場する。茨城県勢としては18年ぶりの出場となる。金沢監督は「全国レベルにはまだ力が足りない。これから投手力を整備して、神宮、そして甲子園へとつなげていきたい」と、力を込めた。