帝京長岡が中越に9-0の8回コールドで快勝し、県大会では準優勝の昨夏以来の決勝進出を決めた。原動力は公式戦初登板の小林真大投手(2年)。中越相手に8回5安打の無失点投球だった。準決勝を任された2年生は粘りの投球を初披露し、92年秋以来の県頂点にあと1勝とした。加茂暁星との決勝は12日に行われる。

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何度もピンチを背負っても、マウンドの小林は顔色ひとつ変えなかった。初回は野手の失策と四球で無死一、二塁。6回は2死満塁、7回には1死二、三塁と得点圏の走者を出しながらも得点は許さなかった。「空振りを取る技術はないので仲間を信じ、打たせて守ってもらおうと思っていた」。準決勝が公式戦初登板だというのに頼もしい。芝草宇宙監督(53)は「逃げずに向かっていった。投手として一番大事なところ」と評した。

昨秋から野手として起用されてきた。今春も3回戦の長岡戦で遊撃手として先発出場。しかし、小林が熱望しているポジションは小1から9年間取り組んできた投手。「あの子は入学時から投手をやりたくて、何度も直接言ってきた」と芝草監督は言う。そんな熱意を買って、今年から投手の一角に加えた。前日10日は異例の部員全員の前で先発投手を発表。「全員で守り抜くぞ、という話をした」。そんな指揮官の思惑以上の8回無失点投球をやってのけた。

「マウンドからバックネット裏を見たらお客さんがたくさんいて、ここで投げる楽しみがあった」と小林は晴れ舞台を楽しんだ。「直球をコースに投げ分けられた」と緊張を強いられる初登板も自分らしさを出した。東京都出身ながら「芝草監督がいたから、ここ一択」と帝京長岡に入学し、指揮官と同じ投手としての活躍を目指す。あと1勝で92年秋以来の県制覇に手が届く。【涌井幹雄】

○…中越 本田仁哉監督(46)は「完全に力不足」と試合を振り返った。「尾身をはじめ、野本以外でも投げられる投手が増えた」と手応えもあった。攻守ともに課題も出た。「夏までに勝てるチームに仕上げたい。今年のチームは例年に比べても大きな可能性を秘めている。最後の勝負で万全な状態で臨む」。下を向く間もなく、気持ちは夏の大会に向かっていた。