初戦で実現した奈良大会屈指の好カードは、夏連覇を目指す天理が15-14で奈良大付を振り切った。7-10で迎えた8回に赤埴(あかはに)克樹捕手(3年)が高校14号の逆転満塁弾を放つなど一挙8得点。弟の幸輝内野手(1年)も反撃の適時打を放ち、雷の発生による55分間の中断を含む3時間49分の大激闘を制した。
ホームを死守する兄の赤埴克樹は、祈る思いで弟幸輝の動きを目で追った。遊撃を守る弟は「おれのところに飛んでこい」と打球を待っていた。15-14の9回2死二塁。最後のゴロを幸輝がさばいて、両軍17安打ずつ飛び交った3時間49分の大激闘を制した。約3時間前、稲妻が走った大荒れの空がうそのように晴れ渡った夏空に向かい、克樹はガッツポーズで絶叫した。
「最後まで気が抜けなかった。終わったと思うとほっとしました」
昨夏王者の天理が苦しみ抜いた。相手は17年と18年の県決勝でも戦った強豪の奈良大付。今春の県初戦の2回戦は7-2で快勝したが、この日は4回表までに7得点しても、その裏に雷による55分間の中断をはさんで追いつかれ、5回には失策で勝ち越された。7回には2ランで7-10。ダメを押されたかに見えた。
だが8回、眠っていた底力が目覚めた。3連打で1点差に詰めてなお2死満塁。兄克樹が初球の変化球を捉え、左翼スタンドに逆転決勝のグランドスラムをたたき込んだ。「初球からいこうと決めていました。自分たちのやってきたことを信じてやってきたので」。
兄の劇的アーチが飛び出す直前、弟幸輝も反撃の適時打を放った。一挙8得点のビッグイニングに、兄弟で大貢献。兄が「緊迫した場面で1本出した。よくやったなと思います。一緒に甲子園に出たいと話していたので」とねぎらえば、弟も「ずっと尊敬する存在です」と胸を張った。
父智博さん(53)も天理OB。中村良二監督(55)の2年後輩で、88年の選抜大会に出場した。父に憧れて克樹は入学を決め、兄を追って幸輝も天理の一員になった。中村監督も「親子で同じ学校でやりたいと思ってくれる。ありがたいことです」と目を細める。
克樹は朝5時に起きて野球部寮や周辺を掃除する。黙々と自分で決めた日課に取り組む。そんな姿も、幸輝の誇りだ。「自分も頑張らなければと思えます」。劇的な勝利で天理が連覇へ走り出した。【堀まどか】
◆赤埴克樹(あかはに・かつき)2005年(平成17)8月31日生まれ、大阪市出身。小学2年から大阪クーガースで野球を始め、阪神タイガースジュニアに選抜。カル・リプケン12歳以下世界少年野球大会出場。今津中では大阪東ボーイズに所属。天理では1年秋からベンチ入り。2年夏の甲子園は背番号16で出場。175センチ、75キロ。右投げ右打ち。
◆赤埴幸輝(あかはに・こうき)2007年(平19)5月5日、大阪市生まれ。小学1年から大阪クーガースで主に二塁、遊撃手で野球を始める。今津中では大阪東ボーイズに所属。天理では1年春からベンチ入り。180センチ、71キロ。右投げ右打ち。

