今夏最後の大物がようやく登場した。大阪大会で、今秋ドラフト1位候補の大阪桐蔭・前田悠伍投手(3年)が今夏初登板初先発。センバツ準決勝・報徳学園(兵庫)戦以来の公式戦で、強敵の東海大大阪仰星を相手に6回を4被安打4奪三振2失点と粘投した。
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熱気の揺らめくマウンドが、前田を待っていた。「ワクワクしました。楽しむという気持ち、相手に立ち向かっていくという気持ちでした」。夏の甲子園を目指す戦いに、ついにエースが参戦した。
12球団のスカウトがスピードガンとビデオカメラを構え、スタンドを埋めた観客が見守ったその立ち上がり。打者3人を完全に封じた。だが2回は6番打者に、6回は5番打者にいずれも直球を捉えられ、左翼スタンドまで運ばれた。昨年のセンバツ優勝投手で高校球界無双だったはずのエースが、まさかの公式戦初の2被弾。攻めた投球の結果とはいえ、制球力の良さも長所の左腕が4四死球だ。それでも前田は「甘い球が行って打たれてしまったので、自分の力不足です」と冷静に前を向いた。
春の甲子園後は公式戦を全休し、状態の回復に専念した。下半身をしっかり作り直し、遠投も取り入れたキャッチボール、投げ込みで夏に向けて準備。6月に入ってようやく、横浜(神奈川)や創志学園(岡山)などとの練習試合で投げ始めた。7月6日には大会前最後の練習試合となった奈良商工戦で9回13奪三振、ノーヒットノーランも達成。相手打者をねじ伏せていた「前田の球」を取り戻す道半ばだが、「状態は上がってきています」と手応えはある。
この日最速146キロの速球を含む96球を受けた捕手の南川幸輝(3年)は「球に強さがあるし、マウンドに立つとやっぱり安心感があります」と納得顔だ。
センバツで逆転負けした報徳学園や優勝校の山梨学院などが夏の戦いを終える中、前田自身はこれから集大成の夏に向かう。30日の決勝まで残り6日で4試合。「春は少し不安がありましたが、高校最後の夏に合わせてきた。気持ちの部分でセンバツとは違う。1球1球魂込めて投げていきます」。やはりエースには力強い言葉がよく似合う。【堀まどか】
◆大阪桐蔭・西谷浩一監督「前田は相手打者を見ながら、しっかり投げてくれた。ブルペンで投げるのとマウンドとでは全然違うタイプ。マウンドに立てば打者を見ながらしっかり投げてくれる。エースなので、前田の頑張りなくしてこのチームはないと思います」
◆広島鞘師スカウト「やっぱり投球がうまい。チェンジアップは速いのと遅いのを使い分けられる。センスがいいし、うちでいう前田健太みたい。左のマエケンです」
◆オリックス谷口スカウト「素材は間違いない。うちで言ったら、宮城のようになる可能性があります」

