今年も「運命の1日」がやってくる。プロ野球ドラフト会議が10月26日に都内で行われる。日刊スポーツ東北版では「ドラフト候補に聞く」と題し、プロ志望届を出した選手の思いに迫る連載をスタート(不定期)。第1回は、日本ウェルネス宮城・大内誠弥投手(3年)。今夏宮城大会は2回戦で敗退したが、191センチの長身から投げ込む最速144キロの速球が魅力だ。成長著しい「未完の大器」が決意を新たにした。

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将来性豊かな大型右腕・大内が「上の舞台でやりたいと思っていた。自分の力を試したい」と、プロ志望届を提出した。チームは今夏宮城大会で初戦を突破。だが、先発した2回戦古川学園戦で5回4失点と崩れ、役割を果たせず敗戦。課題は明確だ。「真っすぐの威力がなくて打たれてしまった。今は体づくりをして真っすぐを良くしようと思っている」。大会後から食事量を増やし、練習はほぼ毎日参加。練習がない日や土日はジムに通い、筋力トレーニングに取り組む。

プロを意識するようになったのは今春の県大会2回戦東北戦だった。センバツ出場校に完封負けしたものの、7回4安打11奪三振3失点(自責1)の力投。金子隆監督(66)は「自分でも思った以上に好投したことが自信になって『プロに行きたい』と、かじを切ったのではないか」。夏の飛躍に向けて意識を高く持ち「春以上のボールを投げる」ため、課題の制球やスタミナを改善すべく、長距離走や約10メートルのダッシュを繰り返し、体力を強化した。

1年から指導する金子監督は「長身から投げ下ろすボールだけで人と違う。角度のあるボールを放れる」と大内の魅力を語る。中学時代は投手に本格的に取り組んでいなかったため、2年秋まではボールを押し出すように投げていた。そこで、真上から投げ下ろすようにアドバイス。「(ボールが)指にかかることを覚え、変化球も上手に投げられるようになった」と成長曲線を描き始めた。

志望届の提出は家族や金子監督らと相談し、本人の意思が尊重された。20年創部の同校で指名されれば、初のプロ選手が誕生する。大内は「たまたま自分が最初だっただけ。ウェルネスを背負っているところもあるので頑張りたい」。当日は家族と静かに指名を待つ-。「試合で勝てるような投手になりたい」と語った逸材は、スタートラインに立つための吉報を待っている。【相沢孔志】

◆大内誠弥(おおうち・せいや)2006年(平18)3月9日生まれ、宮城県東松島市出身。赤井南小1年から大曲ドリームズで野球を始める。矢本二中では東松島シニアに所属。日本ウェルネス宮城では1年夏ベンチ入り。191センチ、77キロ。右投げ右打ち。50メートル走6秒7。遠投110メートル。目標の選手はMLBパドレス・ダルビッシュ有。