古川学園が東陵に9-6で逆転勝ちを収め、秋では11年以来12年ぶりの東北大会出場を決めた。昨年6月に原因不明の下半身まひを患い、10カ月間野球から離れていた高島旭陽捕手(2年)が、6-6で迎えた9回2死三塁、決勝適時二塁打を放ち、勝ち越しに成功。歩けなかった状態から再び立ち上がった扇の要が、チームを勝利に導いた。

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「しんどいな」。足が全く動かせない、触られた感覚もない状態が10カ月続き、一時は「野球をやめちゃおうかと思った」。そんな高島を野球につなぎとめたのは山崎雄大監督の一言だった。「(山崎先生が)家まで来てくれて、『野球を一緒にやろうよ』と言ってくれたのが今でも忘れられない」。

今年4月、指揮官は高島に秋の県大会でのマネジャーとしてのベンチ入りを打診。しかし、高島は「見ていたら絶対野球をやりたくなる。『せっかくなら選手でやらせてください』とお伝えしました」。今年5月に練習に復帰。周りから何歩も遅れてのスタートだったが、高島は必死に歩き続け、宣言通り、選手として「背番号2」を勝ち取った。今大会は4試合連続でスタメンマスクを被り、この日は決勝打。指揮官は高島について「日々の取り組みも抜かりがない。太陽のような子で、周りを照らしてくれるような子」と語り、目に涙を浮かべながら「彼の成長がうれしいです」と言葉を絞りだした。

高島は決勝打を振り返り、「諦めないでやってきて良かった。いろんな人に支えられて今の自分がある。その思いも含めた一打だったのかな」。二塁上では、スタンドからの大歓声を浴びながら右拳を何度も何度も空へ突き上げていた。決勝は今日24日、聖和学園と対戦。高島は「勝つことだけを意識してやります」。名前は旭陽(あさひ)。朝日のごとく、みんなを照らす。09年以来14年ぶりの秋の頂点へ、夜明けはすぐそこだ。【濱本神威】

 

○…聖和学園が仙台一に4-1で勝利し、2年ぶりの東北切符をつかんだ。準々決勝の仙台城南戦に続いて先発した千葉桜太投手(2年)は5回5安打1失点。6回から引き継いだエース右腕・斎藤佑樹投手(2年)は、千葉の粘投に応え、4回無安打で試合を締めた。千葉は「投手陣は特に仲がいい。(斎藤佑は)友だちを超えた存在です」と信頼を寄せた。