“木の力”で初戦突破だ。青森山田が京都国際をサヨナラで破り、3度目の出場でセンバツ初勝利を挙げた。クリーンアップ2選手が木製バットを使用。5番吉川勇大内野手(3年)が9回にサヨナラにつながる三塁打を放つなど、2安打の活躍で打線をけん引。低反発バットが導入された大会で、あえて木製バットにこだわり、結果を出した。

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木製バットの快音が甲子園に響いた。同点の9回1死、吉川が2球目の真ん中直球を振り抜くと、打球は中堅手の頭上を越えた。一気に三塁を陥れ、続く伊藤英の一打で右拳を突き上げながら本塁へ。「やっぱりうれしい。(みんな)喜んでました」と笑った。

1回の第1打席ではチャンス拡大の左前打。「(秋は)とても悔しくて。それでも冬の練習を頑張ってきて、こうやってグラウンドに立てた」。秋はケガに泣き、東北大会、明治神宮大会は控えに回った5番打者が、勝負強さを発揮した。

使用を示唆する選手はいたが、今大会で木製を使ったのは青森山田の2人が初めて。吉川自身、この先より高いレベルで野球をやることも視野に入れ、昨秋のチーム練習で低反発バットを使うようになっても、1度も試さなかった。相棒は日本ハム松本剛モデルのメープルバットで890グラム、重心はミドル。バッティンググラブを革製からゴム製に変更するなど、滑り対策も万全。「自分は木製の方が飛ばせるのかなと思う」と、感覚を結果で示した。

小さなころから道具を大事に扱い、「(バットが折れたことは)1回もないです」と胸を張る。父永利さん(46)も「毎日磨いていて、親ながら感心しています」とうなずく。その習慣は甲子園に出場した今でも同じ。「練習でも使った道具はその日に磨く。毎日やってます」。この日の相棒も前日に丁寧に磨き、晴れ舞台に備えた。

目標は「ここぞという場面で打てるようなバッター」だ。言葉通りにチームにセンバツ初勝利を呼び込んだが、満足はしていない。「どんなバットを使っても結果出すのは変わらない。チームの勝利が一番なので、勝利につながる一打を打てれば」。木製バットも信念も、折ることなく貫いていく。【濱本神威】

 

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