熊本工が甲子園初対戦となった広陵(広島)との「伝統校対決」に敗れ、初戦で涙をのんだ。先発の2年生右腕、山本凌雅投手が5回に自ら先制タイムリー。だが、7回に逆転を許し、8回1/3を6安打2失点で無念の降板となった。熊本大会で右肋骨(ろっこつ)を疲労骨折したプロ注目の146キロ右腕、広永大道(だいち、3年)に代わり、甲子園で背番号1を背負った。マウンドに立てなかった先輩のグラブをはめ、感謝の129球を投じた。
ゲームセットの整列を終えると、熊本工のエース山本の頬を涙が伝った。悔しさがこみ上げ、左手で目頭を押さえた。広陵に紙一重で敗れ、初戦敗退となった。
「自分がもっとチームを引っ張ることができれば勝てたのかな…」
1球に泣いた。5回に自ら先制タイムリーを放ち、1-0で迎えた7回1死二、三塁。浮いたスライダーを1番浜本に痛打された。勝負どころで痛恨の失投。「甘く入ってしまったことが命取りになった」。逆転の二塁走者まで生還。終盤で試合をひっくり返され、甲子園初対決となった名門校同士の一戦で力尽きた。
異変もあった。6回終了時。「足がつりそう…」と女房役の吉岡伸捕手(3年)に打ち明けていた。「山本は全然つったこともなかった。でも、変化球のキレもなくなってきて…」。普段はポーカーフェースを貫き、弱音を吐くタイプではない。ただ、プロ注目右腕の広陵・高尾との投げ合い。酷暑下でのしびれる展開、プレッシャーも相まって肉体は悲鳴を上げていた。
甲子園から背番号1を託された。最速146キロ右腕で、プロ注目のエース広永はベンチ外。熊本大会初戦で右の肋骨(ろっこつ)を疲労骨折した。全治3カ月以上の大けがを負い、代役で伝統のエースナンバーを背負うことになった。
試合2日前の10日、先輩から熱いエールを受けた。「俺の思いも背負って投げてくれ!」。広永のグラブも譲り受け、一緒に戦った。3者凡退は3度で、再三の得点圏も粘った。スライダーを中心に低めへ集め、8回1/3を6安打2失点。敗れはしたが、先輩の気持ちに応える129球の力投だった。「ケガして一番悔しいはずなのに、ずっと声をかけてくれた。広永さんに一番に『ありがとう』と伝えたいです」と涙をぬぐった。
そして誓った。「絶対ここに戻って来て、プレーしたいです」。1球に泣いた敗戦を糧に、一回りも、二回りも大きくなって甲子園に帰って来る。【佐藤究】
◆山本凌雅(やまもと・りょうが)2007年(平19)8月2日生まれ、熊本県八代市出身。小4で野球を始め、八代七中では熊本東リトルシニアに所属。熊本工では1年夏に背番号11で初のベンチ入り。今夏の熊本大会は背番号10で全5試合に先発。5勝0敗、1完封、2完投で防御率0・68をマーク。好きなプロ野球選手はカブス今永昇太。173センチ、63キロ。右投げ右打ち。
○…熊本工の5番で主将の浜口が3安打と気を吐いた。0-0の5回先頭で右中間を破る二塁打で出塁。山本の先制タイムリーを呼び込んだ。7回も先頭で中前打を放ち、9回無死一塁では中前打を放って夢をつないだ。「みんなの応援が背中を押してくれた。自分だけの力じゃないです」。二塁守備でも好プレーも見せ、攻守でチームを引っ張り続けた。「最後にこの舞台で全員で戦えた。この代のキャプテンでよかったです」と胸を張った。

