健大高崎(群馬)の甲子園春夏連覇はならなかった。ベンチを出て、舞台裏の通路にナインのおえつが響く。金井俐樹捕手(3年)も声を上げて泣いた。

1点を追う9回1死、相手の負傷で試合が中断した。空気を変えよう-。金井は「奇跡を起こせ!」と叫んだ。背番号12の三塁コーチャー。大観衆が埋める甲子園で、試合中もひときわ大きな声が響いた。

プロ注目の箱山遥人捕手(3年)の陰に隠れたが、中学時代は群馬県では名の知れた捕手だった。志望先の健大高崎に、すでに関東界隈では有名だった箱山が東京から入学することを知った3年前。それでも「高いレベルで争ってみたい」と入学を決意した。

でも、やっぱり。

「中学での自信がこの高校に来て、箱山に取られて、一番下に落ちたというか。挫折を味わったのがあります」

それでも腐らずやった。元気の良さと声のデカさは人一倍。この夏、健大高崎のベンチ入り20人のうち、捕手は異例の4人。青柳博文監督(52)が「金井は三塁コーチの仕事もあるし、ブルペンで受ける選手が手薄になるので」と言うほど、勝利への空気を作る上で欠かせない存在だった。

「箱山にはキャプテンで4番捕手という役割があって、自分には自分の役割があって。しんどい時期もあったんですけど、箱山がいたから今の自分がいます。箱山がいて自分が2枚目で、それはそれでいい高校野球だったと思います。箱山がいたから自分の目指すべきことも決まりましたし、箱山以上の捕手は同学年にはいないと思っているので。箱山が自分の上に立っているというのはすごく安心感がありました」

試合前の円陣の後はいつも、金井がスタメン以外の選手を集めて“円陣その2”をやっていた。「スタメンの選手たちをどうやってサポートしていくか。その確認作業です」。

箱山が主将の重圧に苦しんだ時、指導陣に「一度、金井に代えてもらえませんか?」と打診したこともあるほどのキャプテンシーで、健大高崎を前へ進めた。自分らしさを出し切った、絶叫甲子園。何度も青空に響き渡る「よっしゃ~!!」は、100年目を迎える甲子園球場を確かに彩った。【金子真仁】

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