公立で唯一8強入りして旋風を巻き起こした大社(島根)は、エース左腕の馬庭優太投手(3年)の奮闘及ばず、神村学園(鹿児島)に屈した。それでも32年ぶりの出場で快進撃を続け、107年ぶりの2勝、93年ぶりの準々決勝進出、大会NO・1の大声援が話題を呼ぶなど、大きな存在感を示した。
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馬庭の頬を伝う雨に、大粒の涙が入り交じった。敗戦後に一塁側アルプスへあいさつを終えると、石飛文太監督(42)から右肩に腕を回され「お疲れ」と声をかけられた。「いろんなことがよみがえってきて…」。涙が止まらなかった。「抑えることができなくて、最後こういう形で終わらせてしまって、すごく申し訳ない気持ちです」。
3試合連続完投で計401球を投じて旋風の中心にいた左腕は、先発岸、2番手山本を受け、同点の5回無死一、二塁から登板。だが、味方守備のミスもあり1点を勝ち越されると、7回は4連打を浴び4失点。「力の差を感じました」。4試合で計492球を投じたが「疲労はないです。自分の準備不足に尽きます」と言い訳はしなかった。
縁結びの神様で有名な出雲大社のお膝元から32年ぶりに出場した公立の星として、ミラクルを起こし続けてきた。初戦でセンバツ準Vの報徳学園(兵庫)を破ると、2回戦では創成館(長崎)を下して107年ぶりの2勝目。早実(西東京)とは延長11回タイブレークに及んだ球史に残る激闘を繰り広げ、同校初の3勝を挙げ目標のベスト8に進出した。この日も中盤まで昨夏4強の神村学園と互角の戦いを演じた「大社旋風」は、全国に勇気と感動をもたらした。
一塁側アルプスには即完売した2800枚のチケットを携えた大応援団が、バス19台で出雲市から駆けつけ、ぎっしり埋め尽くした。今大会NO・1といえる熱烈な大声援を受けた馬庭は「すごく愛されているなと思ってうれしかった。幸せな場所でした」とかみしめ、甲子園の土は持って帰らなかった。「来年後輩が(8強より)上の景色を見せてくれると思っているので、その時に分けてもらおうと思います」。
チームで必勝祈願も行った出雲大社の神様には「やりきりましたと伝えます」と笑顔で報告する。試合直後、出雲市内の空にはナインの健闘をたたえるように、大きな虹がかかった。【古財稜明】
▽大社・石飛文太監督「私の采配ミスで点を取ってやれなかったのが最大の敗因。ピッチャーは素晴らしい投球をしてくれました。今日の負けは悔しい。ただ、歴史を動かしてくれたことにはうれしい」
▽大社・石原勇翔主将(3年)(捕手として3度盗塁を阻止)「ふがいない主将だったんですけど、1人1人が引っ張ってくれたので、背負うことはなかった。3年生にありがとうと素直に言いたいです」

