<高校野球南北海道大会:札幌南3-0札幌一>◇21日◇準々決勝

 札幌南はエース大間幹起(よしき=3年)が、チーム打率4割3分7厘を誇った札幌一の強力打線を散発4安打完封。打っては2-0の3回裏に左中間最深部へソロ本塁打を放つなど、投打にわたる活躍で4年ぶりのベスト4に花を添えた。

 まずは「打」で魅せた。3回裏2死。札幌南の大間が豪快にフルスイングした打球は、夏のさわやかな風を切り裂き、左中間芝生席に飛び込んだ。「ちょっと信じられない。地区では当たっていなかったので」。三塁ベースを回ると、応援団が歓喜する一塁側スタンドに向かって、右拳を突き上げた。

 序盤3点目の効果的な1発で「投」もリズムに乗った。「体が温まってきて、球が走りました」。4回以降はタイミングを外す緩いカーブを武器に、伸びのある直球を高低、内外角に投げ分けた。これまでの試合から直球に狙いを絞っていた札幌一打線は、データと違う投球にてこずった。

 札幌勢同士の大一番での快投に、池田賢監督(44)もびっくりだ。「大間はすごい。前の試合より、またひと回り大きくなった」。「相手打線は強力なので、甘い球だけは見逃してくれない。腕を振ってコースを狙いました」と振り返った大間の136球は、この日も柳沢捕手の構えたミットにほとんど収まった。

 エースで3番、主将としてチームをまとめる。自分には厳しく、練習でのダッシュは最後の1本まで全力で走る。試合中はチームメートに積極的に声をかけ、“和”を重視する。初回1死から佐藤遊撃手が失策すると、マウンドから駆け寄り「次に取れば大丈夫」と笑った。「幹起に言われると、気持ちが楽になるんです」と佐藤は全幅の信頼を寄せる。

 幼稚園のころ、プラスチックバットで妹みのりさん(札幌平岡緑中3年)と遊びながら野球に目覚めた。妹も野球のとりこになり、女子軟式野球「札幌シェールズ」に所属。父啓さん(46=会社員)は青森北高で83年春甲子園に出場し、筑波大を経て社会人野球のたくぎん(96年廃部)で活躍した。今、野球一家の中心にいる大間の好きな言葉は「過去と他人は変えられないが、自分と未来は変えられる」。近未来の夢甲子園まであと2つだ。【中尾猛】