<高校野球埼玉大会:花咲徳栄6-2浦和学院>◇26日◇準決勝

 最後の打者を三振に仕留めるとスタンドが大きくわいた。センバツ出場の浦和学院を破ったのは、弱気の虫を克服した背番号1、花咲徳栄・北川大翔投手(3年)だった。「粘り強く投げようと思いました」と9回14安打2失点の粘投。チームとして夏初めて宿敵を倒し、笑顔を見せた。

 昨夏、エース候補だった松本晃岳投手(3年)がひじを故障。巡ってきた背番号1の重圧に体重が激減した。夏バテもあり、69キロの体は63キロまで落ちた。秋県大会はまさかの初戦敗退。「怖くて投げたくなかった」というところまで追い込まれていた。

 しかしそんな弱気を変えたのもやはり野球だった。春県大会を制し、関東大会出場。敗れはしたが強打の日大三(西東京)に立ち向かい、強いチームと戦うことで「もっと投げたい」と思うようになった。すると激やせした体重が戻った。練習と食事で63キロから今度は77キロと一気に14キロ増量。体重増とともにエースの自覚が芽生えた。

 だが、まだ、たまに弱気な顔がのぞく。この日の7回「打たれるのが怖くなった」と3四球で2死満塁。遊撃の大塚健太朗副将(3年)がタイムを取った。「打たれてもいいからど真ん中に放れ」。北川は守備を信じ、次打者を内野ゴロに打ち取り流れを切った。「打たれても周りが守ってくれる」。春日部共栄との決勝でも仲間を信じて投げる。【島根純】