<高校野球南北海道大会:函館ラサール8-7函館工>◇29日◇函館地区Cブロック代表決定戦◇函館オーシャン

 “逆転のラサール”ここにあり-。勝利の方程式で、大逆転のサヨナラ劇だ。函館地区で函館ラサールが古豪・函館工を下し、創部53年目で初の南北海道大会出場を決めた。公式戦初先発でノックアウトされ、一塁守備に就いていた祁答院(きどういん)久史一塁手(1年)が9回、汚名返上の逆転サヨナラ2点二塁打。道内屈指の知能派軍団が最大6点差をはね返し、甲子園への夢をつないだ。

 1年生が、大仕事をやってのけた。9回、1点差に迫って、なおも1死満塁。押せ押せムードの中、祁答院が放った鋭い打球は、中堅右の芝生で跳ねた。「夢か現実か分からなくて、ひたすら走りました」。大一番で飛び出した、人生初のサヨナラ打。二塁を回ったところで、ようやくサヨナラ勝ちに気づき、両手の人さし指を天に突き上げたまま、ホームで待つ仲間の輪へ飛び込んだ。

 汚名返上を期していた。代表決定戦の先発を託されたものの、2回途中で6四死球と制球が定まらずに6失点(自責1)で降板。ほろ苦い思いを残したまま一塁守備へ。先輩たちが打って、打って、点を取り返す様を目に焼き付けた。「みんなの思いで持っていったヒットでした」と殊勲打を振り返った。

 「去年の春の全道大会を、テレビ中継で拝見させていただきました」という。名門・北海を、4点差から逆転で下したチームカラーは、しっかりと後輩に受け継がれている。武田将知(まさと)監督(26)は「(大舞台で公式戦初先発させて)『ごめんね』と『ありがとう』と言いたい」と目を細める。終盤の強さを信じて、この日も迷わず後攻めを選択した。

 中高一貫の男子校で道内屈指の高偏差値を誇る。学業優先で、練習は1日2時間ほど。テストで赤点3つ以上取ると、部活動に参加できないという決まりがあり、本来4番を打っていた3年生は今大会、出場登録が出来なかった。武田監督は「次のテストで頑張れば、南北海道大会には出場できる。絶対に道大会へ行くから、お前も勉強を頑張れと言っていた」と声を弾ませた。

 一丸でつないだ甲子園への夢。知能派軍団の夏は、これからが本番だ。【中島宙恵】