<高校野球南北海道大会:札幌丘珠11-10札幌南>◇3日◇札幌地区Bブロック3回戦◇札幌円山

 スタンドから、声をからした。札幌丘珠・遠藤竜治選手(3年)に、背番号はない。「僕が出来ることは、声を出すこと」。必死の応援が届いたのか、チームは7回、2点差を追い付き、8回に勝ち越し。看板の打線が13安打と火を吹いた。

 東日本大震災で生活が一変した。実家は、福島第1原発事故の影響で除染特別地域に指定され、震災翌年まで立ち入り制限された福島県川内村。「仏壇が倒れて、立っていられないくらいの揺れ。カバンひとつで避難しました」。中学時代に中体連の軟式野球で県3位に入った賞状も、ユニホームも。思い出の品は、すべて実家に残したまま。震災直後の11年4月、中学3年の時に、役場職員の父を除く家族3人で、札幌へ移住した。

 もともと、人見知り。新天地で多くの友人に出会えたのは、野球のおかげだった。「野球が強いと聞いたので」と選んだ進学先は、部員51人と公立では大所帯。「(東北弁で)なまっているので、いじられることも多かったけれど、楽しいやつばかり」。最後の夏は甲子園へ。背番号はなくても、グラウンドで戦う仲間と一緒に、同じ夢を追いかけている。【中島宙恵】