<高校野球宮城大会:仙台商10-2古川>◇8日◇2回戦◇石巻市民

 仙台商は古川に7回コールド勝ち。古川のエース中條光之助(3年)は故障から登板することなく、初戦で姿を消した。

 エースはマウンドに立つことなく最後の夏を終えた。「投げられなくて悔しい…」。声を絞り出したが、その目に涙はなかった。

 183センチの体から最速140キロの直球を武器にする本格派右腕。1年秋から1番を背負い、打っても左打席から鋭い打球を広角に打ち分ける主軸だった。今春の県大会1回戦の塩釜戦では延長15回、178球を投げ抜き1-1。2日後の再試合では3番、一塁手で2安打したが登板はなかった。引き分けた夜、背中から腰にかけて激痛を感じていたからだ。再試合に延長13回サヨナラ負けした後、病院で原因不明の「仙腸関節炎」と診断され、1カ月間の入院を余儀なくされた。

 しびれるような痛みがまだ残っている。今も松葉づえが必要だが、開会式では歯を食いしばって行進した。佐々木貴芳監督(42)も登板不能を承知の上でベンチ入りさせた。その思いに応えようとブルペンでは投球練習するふりをして仙台商ベンチにプレッシャーをかけ、伝令にも出た。

 「今日勝てれば3回戦では投げられるかもしれないと…」。思わず涙があふれそうになったが、グッとこらえた。「(試合に)出てないので我慢します」。投げて負けたなら思い切り泣けたのに…。大きな悔いと誇りを胸に、エースは球場を後にした。