<高校野球宮城大会:東北学院4-3仙台育英>◇15日◇4回戦◇コボスタ宮城

 東北学院が3連覇を狙った第1シード仙台育英を延長13回、撃破した。13回表に5番浅野太祐捕手(2年)が決勝本塁打。右腕エース山下康平(3年)が186球の完投で激戦を制し、3年ぶりにベスト8入りした。

 エース山下に東北学院ナインが駆け寄った。2年生捕手の浅野も、ベンチから飛び出してきた仲間と抱き合った。うれし涙を流す選手もいる。約1100人の全校応援の中、12年春から7季連続県制覇の絶対王者・仙台育英を延長13回の末、ついに倒した。渡辺徹監督(43)は「普段、見せない集中力を見せた」と想像以上の選手の奮闘に目を丸くした。

 8回に3点差を追いつかれた。延長に入ってから、相手の好守に得点を阻まれた。その嫌なムードを浅野が13回に振り払った。左打席で1死から内角速球を強振し、右翼ポール際にソロアーチ。淡々とベースを1周し「頭の中、真っ白で記憶にない」と興奮していた。「延長に入って山下さんを助けてあげたかった」。捕手としてエースを援護したい一心で飛び出した公式戦初本塁打だった。

 初戦の2回戦で7回参考ながら完全試合を達成した山下は、186球を投げ抜いた。スライダーをコーナーに投げ分けて、12安打を浴びながら失点は8回の3点だけ。「バックを信頼して打たせて取るだけでした」とニンマリ。奪三振はわずか1で自分の投球を貫いた。兄康太さん(駒大2年)も東北学院のエースで、2年前の夏は仙台育英に0-10と大敗。弟が兄の雪辱を果たした。

 昨秋の県大会、今春の中部地区大会で仙台育英にコールド負けした。浅野によればチームの合言葉は「革命を起こす」。現チームになった昨秋から1日約3時間の練習のうち、2時間以上を打撃に割く。今大会は初戦から3試合連続の2桁安打を記録。約1年かけて鍛えてきた打撃力で、合言葉を現実にした。

 3年ぶりのベスト8。山下は「育英に勝って喜びに浸っていてはダメ。次の一番が勝負」と、初の4強入りへ気を引き締めた。東北学院の「革命」はまだ終わらない。【久野朗】

 ◆山下康平(やました・こうへい)1996年(平8)5月9日、仙台市生まれ。東仙台小2年で野球を始め、5年から投手。東北学院中では軟式野球部に所属。東北学院では1年秋からエース。178センチ、65キロ。右投げ右打ち。家族は両親と兄。

 ◆浅野太祐(あさの・たすく)1998年(平10)2月4日、仙台市生まれ。富ケ丘小2年で野球を始め、主に内外野を守る。日吉台中では宮城北部シニアに所属し捕手。東北学院では1年夏からベンチ入り。185センチ、78キロ。右投げ左打ち。家族は両親、祖父母と双子の妹。