<高校野球宮城大会:佐沼8-3塩釜>◇20日◇準決勝◇コボスタ宮城

 佐沼が第4シード塩釜を破って48年ぶり3度目の決勝進出を決めた。

 守りの野球で快進撃を続けてきた佐沼が、小技を絡めた攻撃で王手をかけた。初回に塩釜のミスから先制すると、2回にも四死球からつないで2点を追加。4回には相手の失策に乗じて一挙4点を奪った。終わってみれば今大会最多の10安打8得点。茂泉公己監督(40)も「こんなに点が入るとは思わなかった」と驚くほどの集中力を見せた。

 勝負を分けたのは、鍛え続けてきたバントだった。前日19日も大雨の中で朝7時半から徹底的に練習。全員が自信を持って試合に臨み、2、4、6回の得点はいずれも犠打を絡めて奪った。サインを送り続けた監督は「塩釜さんは、けん制がうまい。無理せず二塁に進めてプレッシャーをかけ続けようと思った」。長打わずか1本、盗塁ゼロでも、6個の犠打を成功させて相手の守備を乱れさせた。

 4番でも送る。高橋大和(3年)は、バントが大の苦手だった。昨年は練習で何度やっても決まらず「悔しくて泣いたこともある」と振り返る。自主練習などで上達したが、前日も全体練習後に納得いくまで30分以上を費やした。チームプレーに徹する男は「4番目に打ってるだけですから。1試合で2つ決めたのは初めて」と白い歯を見せた。

 創部111年目で、悲願の甲子園まであと1勝。前日夜に母の作ったカツ丼を食べて3失点完投したエース佐々木暉(3年)は「勝ったら甲子園という実感はない。全員が一丸となってぶつかるだけ」。昨秋も春も地区大会で敗退した佐沼が、ありのままの野球で頂点を取りに行く。【鹿野雄太】