<高校野球南北海道大会:札幌日大5-1駒大苫小牧>◇20日◇準々決勝◇札幌円山

 札幌日大が今春センバツ出場の駒大苫小牧を下し、2年ぶりの準決勝進出を果たした。ゴリの異名を持つ兼村優豪一塁手(3年)が2回表の第1打席に左翼フェンス直撃の三塁打、続く4回表の打席では左翼スタンドに2点本塁打。5番の一振りで夏の甲子園初出場へ、あと2勝に迫った。

 1点リードで迎えた4回表無死一塁、3球目の内角直球をひっぱたくと、白球は高く舞い上がった。感触はややつまり気味。それでも兼村は「入る」と確信しながら、一塁を回った。「昨日のオールスターで何本も本塁打を見ていたら、自分も打てるような気がしてたので…」。打球はイメージそのままに、左翼スタンドに飛び込んだ。2ランで勝利をたぐり寄せた。

 地区は11打数1安打とどん底を味わった。全体練習後に約100球入るカゴ2箱分のボールを、センターから右に向かって無心で打った。帰宅後は自宅前の街灯の下でバットを振った。この日は第1打席も先制につながる三塁打。3打数2安打2打点と爆発した。

 183センチ、90キロの巨体から「ゴリ」と呼ばれる。「味に大人を感じる」という好物の高価なウニを、1人で板1枚分をペロリとたいらげる。回転ずしで20皿以上は当たり前。父の善彦さん(48)が「放っておけばスナック菓子1袋があっという間になくなる」という豪快さだ。

 そして優しい。小5の時に野球少年団で準優勝したが「自分が打てなかったから優勝できなかった」と、一塁の守備位置で決勝の試合終了前に泣いた。昨年4月には一緒に銭湯に通った祖父の学さん(享年78)が逝去。公式戦で本塁打を放つたびに遺影の前に記念球を置き、手を合わせる。真心のこもったボールは、この日で4個となった。

 22日の準決勝では2年ぶりの決勝進出をかけて東海大四と対戦する。相手のエース西嶋からは、春の地区大会で1発を放っている。「次も打ちます」。かつての日本一チームを破った剛腕で、再び主役の座を狙う。【中島洋尚】