<高校野球宮城大会:利府3-2佐沼>◇21日◇決勝◇コボスタ宮城

 利府が念願の夏の甲子園初出場を決めた。2-2の6回2死三塁から、8番渡辺智也投手(3年)の左翼へのタイムリー三塁打で勝ち越し。4投手の継投でそのリードを守り切り、佐沼に競り勝った。1回戦から全7試合継投策で勝ち切るなど、全員野球で大混戦の宮城大会を制した。全国高校野球選手権(甲子園)は8月9日に開幕する。

 ベンチ入り20選手の輪が1つになった。9回1死一、二塁のピンチを、準決勝まで2/3回しか投げていない菊池香太郎(3年)が二塁ゴロ併殺に仕留めた。マウンド上のナインの雄たけびが、仙台の空を突き抜けた。上野幹太主将(3年)は興奮していた。「本当に自分たちが勝ったのが分からなくて」。5度目の決勝進出で、ついに夏の甲子園切符を手にした。

 2点リードを5回に追いつかれた直後の6回だった。2死三塁から渡辺の打球は左翼を襲った。左翼手が飛びついたが捕球できず、ボールは左中間に転がった。「内角の速球を狙っていた」と渡辺は胸を張る。同点にされた5回2死一塁から2番手で登板して3回をピシャリと抑えた。かつて打撃投手ながら、計5試合12回2/3を無失点。4月からチームを率いる穀田長彦監督(44)は「渡辺は(今大会)神懸かり的なところがあって、持ってるのかな」と、ラッキーボーイに目を丸くした。

 現チームは、春までまとまりを欠いた。主将は2人代わった。6月に上野が新主将になった。さらに穀田監督は外せない研修のため、大会直前の6月末まで約1カ月間チームを離脱。これが転機になった。1度主将を経験した万城目晃太(2年)によれば、小原仁史前監督(51=現黒川監督)と穀田監督の教え「自分たちで考える野球」に真剣に取り組んだという。上野主将らのもと「先の先を読んだプレー」(万城目)を意識。先頭打者が出れば犠打で走者を進め、好機をモノにすることを1つの心掛けにした。6回の決勝点は、その通りの攻撃だった。

 穀田監督は4月に監督になるまで約7年間、部長を務めた。現3年生が1、2年生の時、下級生同士の練習試合で指導した。「どういう場面でどういう選手を使えばいいのか」と、選手の特徴や成長過程を把握。1回戦から決勝まで、試合状況を見ながら計5人の投手をつぎ込んだ。全7試合を継投で乗り切り、7回以降は1点も失わなかった。

 打者にスター不在、速球派の投手がいなくてもつかんだ宮城74チームの頂点。「夏は初めて。挑戦者の気持ちで」と上野主将は言った。全員野球の利府が、高校球児の聖地に立つ。【久野朗】

 ◆利府

 1984年(昭59)創設の県立校。98年に単位制に移行し、日本で初めてスポーツ科学科を設置した。生徒数は830人(女子365人)。野球部は84年創部。部員89人(マネジャー2人含む)。09年に21世紀枠で初出場したセンバツで4強入り。所在地は宮城郡利府町青葉台1の1の1。高橋昭博校長。◆Vへの足跡◆1回戦6-0大河原商2回戦7-0宮城農3回戦9-2東北生活文化大高4回戦11-2登米準々決勝3-2東北準決勝5-1気仙沼決勝3-2佐沼