<高校野球南北海道大会:東海大四1-0小樽潮陵>◇23日◇決勝◇札幌円山

 東海大四が小樽潮陵を下し、21年ぶり5度目の甲子園切符を手にした。札幌地区から全7試合に登板し、南大会は1回戦から1人でマウンドを守ってきたエース西嶋亮太投手(3年)が凡打の山を築き、散発3安打で完封。1回裏に4番・大河内航左翼手(3年)の左前適時打で奪った虎の子の1点を守り切り、122チームの頂点に立った。

 両手の拳を天に突き上げると、あふれる涙を抑えることができなかった。スコアボードに並んだ、9つの0。緊迫した投手戦に投げ勝った東海大四のエース西嶋は、マウンド上で仲間にもみくちゃにされながら、顔をくしゃくしゃにして、ただ、泣いていた。「うれしすぎて…。あんなに泣いたことは、今までないかもしれません」。18歳の夏。うれし涙の味を、初めて知った。

 その細腕で、強豪校を支えた。身長168センチの小柄な体に日焼け知らずの白い肌は、高校球児のイメージから懸け離れる。だが、ひとたびマウンドに上がれば雰囲気は一変。相手をあざ笑うかのように緩いカーブを投げたかと思えば、伸びのある直球をズバリ投げ込む。完投を念頭に打たせて取ったが、9回だけは全力の3者三振。104球目は「一番自信を持って投げられた」というアウトローの直球で、最後の打者を見逃し三振に仕留めた。「細腕で、体は小さいですが、根性を込めて1球1球投げてくれた。ナイスピッチングでした」と大脇監督。大会中に「腕が折れても投げる」と言ってきた背番号1に、すべてを託した。

 西嶋に象徴されるように、パワーだけに頼る時代は終わった。「10年前は大柄な選手ばかりで、今のようなチームは考えられなかった。若原や大川原なんて、昔ならベンチ入り出来ていない」とOBの大脇監督は言う。体育コースが廃止されたのが、後押しとなった。今大会のベンチ入りメンバー18人のうち、身長160センチ台は西嶋も含めて4人。小技が光る若原、俊足に加えて南大会で5割以上をマークした大川原をアクセントに、多彩な攻撃で、南大会1回戦から1人でマウンドを守ってきたエースを助けた。

 昨秋は全道大会準決勝で今年のセンバツに出場した駒大苫小牧に延長12回0-1でサヨナラ負けし、あと1歩、届かなかった甲子園。西嶋は「甲子園へ行って、優勝するのが本当の目標。ここまで来たら、優勝しか考えていない」と頼もしい。生まれ変わった東海大四が、21年ぶりに戻る聖地で、全国の頂点を狙う。【中島宙恵】

 ◆東海大四

 1964年(昭39)創立の私立校。生徒数728人(女子244人)。創立と同時に創部された野球部は甲子園に春5度、夏4度出場。部員数96人。主なOBにソチ五輪銀メダリストの葛西紀明ら。所在地は札幌市南区南沢517の1。小坂秀王校長。◆Vへの足跡◆◇札幌地区大会2回戦16-0札幌東陵3回戦4-0北海学園札幌代表決定戦3-1恵庭北◇南北海道大会1回戦7-0函館大有斗準々決勝11-5札幌第一準決勝10-0札幌日大決勝1-0小樽潮陵