<高校野球南北海道大会:北海道尚志学園11-4札幌東豊>◇23日◇札幌地区1回戦

 北海道尚志学園が猛打で1回戦を突破した。3-0で迎えた3回裏、4番・浜渕貴之一塁手(3年)が流れを決める2ランを放ち、チームに弾みをつけた。勢いに乗ったナインは15安打と爆発、札幌東豊を11-4の7回コールドで下した。これで浜渕は高校通算37本目。この夏、注目の「ミスター・フルスイング」が、豪快にチームを引っ張っていく。

 思い切り良く振り抜いたバットを、浜渕は数メートルも後方に放り投げた。3回無死二塁。打球は右翼席の芝生でワンバウンドすると、そのまま麻生球場の場外へ消えた。昨秋の札幌琴似工戦(札幌麻生)では場外弾を2発も放った男だ。何事もなかったように淡々とダイヤモンドを回り、ベンチも出迎えることはない。公式戦10本目の本塁打では当然かもしれない。

 183センチ、93キロ。体格だけで投手に重圧をかけられる打者だが、外見だけでなく背筋力270キロと驚異のパワーも誇る。目標の選手も巨人小笠原、レイズ岩村とフルスイングが身上の打者。バットを放るのも高校1年時からのあこがれだ。「ボテボテだと走るのだけで精いっぱいですけど」。バットが舞うということは打球も飛ばしている、ということだ。

 そんな男も今春、自身のスタイルに悩んだ時期があった。札幌地区の北海戦で「大きいのでなく安打を狙おう」と考えた。主将という立場もあったが、柄にもなくミートしやすい足幅に変更し、逆に調子を崩した。チームも完敗した。その後、斉藤仁監督(47)から「持ち味をなくすな。多少強引でも振っていけ」と助言をもらい、迷いが吹っ切れた。

 次戦は札幌一と対戦。「相手の名前は別として、自分らの野球をやるだけ」という浜渕に対し、指揮官は「浜渕が打つとチームに勢いがつく。小さくならず豪快にいってほしい」と期待を込めた。南北海道大会に進み、甲子園も手にしたら、入学前に目標30本だった高校通算本塁打は、いったい何本まで伸びているのだろうか。【本郷昌幸】