<高校野球北北海道大会:東川10-3羽幌>◇26日◇旭川地区1回戦
東川が羽幌を10-3の8回コールドに沈め、ついに公式戦の連敗を止めた。2-3で迎えた5回、4連打などで3点を奪い逆転し、8回に八重冬樹左翼手(3年)がサイクル安打を完成する2点本塁打を放ち、試合を決めた。チームは92年春以来公式戦43連敗を続けていたが、へこたれることなくチャレンジを続け、16年ぶりの歓喜にむせんだ。
選手の目が潤んでいた。女子マネジャーも大泣きしていた。だが誰より藤崎知紀監督(46)の声が震えていた。「東川野球部の過去の選手全員に、この勝利を贈りたい」。長かった屈辱の歴史にピリオドを打つ、大きな大きな1勝。勝利の女神が16年ぶりに東川にほほえんでくれた。
2-3で迎えた5回、4連打と敵失から3点を奪い逆転。6回にも加点。そして迎えた8回裏。4本の安打を集中し一気に決めた。最後は八重が右翼へランニング2点本塁打を放ちコールドが決定。だが、それに気づかず誰もベンチを飛び出さない。喜び合い方も知らない。それでも個々の顔はしっかり笑っていた。
スタートは例年以上に弱いチームだった。昨秋は練習試合で1勝もできず、練習の士気も上がらなかった。冬も近いある日。ロードワークに出たナインはこっそり近道をした。だが藤崎監督にはお見通し。問い詰めると小林貴大主将(3年)は「実は近道をしました」と白状した。「それを聞いた時、こいつら何とかなるかなと思った」と指揮官。オフは体育館で20メートルダッシュを100回、スクワット500回という過去にない猛トレを課したが、誰1人辞めなかった。
郡部の小さな高校の、特筆すべき実績もない野球部。中学時代に野球をやっていた者ですら、この高校では野球部に振り向かない。そうした高校は、いつしか大会に出なくなり自然に部は消滅していく。だが東川は違った。
97年に就任した藤崎監督は、入学してくる30人ほどの男子に、経験者、未経験者を問わず毎年手紙を出し続け、挑戦を続けた。エースの大西涼(2年)は「公式戦で1勝したかったから監督を信じてやってきた。僕らの士気が落ちていた時『オレも勝ちたいんだ』といった言葉を覚えている」と、“変わった”きっかけを話した。16年ぶりに歴史を塗り替えたナインは、新しいページに再びチャレンジしにいく。【本郷昌幸】


